よくある質問(Q&A)

認知行動療法にかかるQ&A

認知行動療法とは?

私たちの気分や行動が、認知(ものごとの捉え方や考え方)の影響を受けることに着目し、偏ってしまった認知のバランスを修正することで、悩みや課題の解決をサポートする心理療法です。
私たちは、ストレスを受けるとネガティブに考えやすくなり、課題の解決が難しい状態に追い込まれてしまいます。認知行動療法は、自分で考え方のバランスを整え、適切に対処するためのスキルを身に付けることをサポートします。
薬物療法と同等の治療効果が期待される一方で副作用がなく、再発予防効果も高い、国際標準の治療法です。

認知行動療法の歴史は?

1970年代に、アメリカの精神科医のアーロン・ベック先生が、うつ病に対する精神療法として開発しました。
その後、うつ病の他にも、不安障害やストレス関連障害、パーソナリティ障害、摂食障害、統合失調症などの精神疾患に対する治療効果や再発予防効果の科学的根拠(エビデンス)をもとに、欧米を中心に世界的に広く用いられるようになりました。また、精神疾患以外にも、慢性痛などの身体疾患をはじめ、日常生活のストレスや人間関係(職場、パートナー、家族、友人など)の悩みにも適用できます。日本では、特に1980年代後半から注目され、治療効果の研究が進んでいます。

認知行動療法の科学的根拠は?

世界中の多くの研究を通じて、治療効果が科学的に証明されています。欧米をはじめ多くの国のガイドラインで推奨されている「国際標準(グローバル・スタンダード)」の心理療法です。日本でも研究成果をもとに、普及を進めています。

カウンセリングは1回何分ですか?

こころケアでは、1回あたり〇〇分・〇〇分(初回〇〇分、2回目以降〇〇分・〇〇分)の時間枠で進めていきます。

カウンセリングの回数やペースは?

目安として、厚生労働省のマニュアル では、毎週1回30分以上のカウンセリングを10回以上推奨しています。
こころケアでは、お一人おひとりの状況に合わせて実施回数やペースなどについてもご相談させていただきます。

認知行動療法の流れは?

大まかな流れは、次のようなイメージです。

STEP11~3回目

状況や課題などについての話を聴くだけでなく、強みや長所、興味・関心などを明確化した上で目標を設定し、治療計画を立てます。

STEP24~7回目

具体的な生活場面を例に、認知のバランスの修正に取り組みます。併せて、行動を見直し、望ましい行動(楽しめたり、やりがいを感じられたりする行動)を増やしていきます。カウンセリング以外の時間にも積極的に実践に努めます。
気分・感情や身体にもよい影響がもたらされ、ポジティブな感情を取り戻し、自信や自己効力感が向上していきます。

STEP38~10回目

カウンセリング終了後も自分で実践できるように、再発予防のための対処スキルを強化・定着させていきます。

認知行動療法の特徴は?

次のような特徴が挙げられます。

  • カウンセラーの温かく受容的な姿勢
    • カウンセラーが患者さんに敬意を持って関わることは、カウンセリングの大前提です
  • カウンセラーとの安心・信頼できる関係性のもと、チームで取り組む
    • カウンセラーとの良好な関係性が治療効果を高めます
    • 認知やそれに影響を与える信念などについて、カウンセラーと力を合わせ科学的に検証していきます(協働的経験主義)
    • 診断や症状、課題、長所や強み、目標などの総合的な情報をもとに、治療計画を立てます(症例の概念化)
  • カウンセリング以外の生活場面での実践を通じて認知のバランスの修正を図る
    • ワーク(アクションプラン)を実践し記録をもとに振り返ります
  • カウンセリング終了後も活用できる、自己対処スキルの獲得
    • 患者さんが主体的に選択・判断・実行できるようになることを目的に、自発的な気づきや発見を促す関わり方(ソクラテス式問答法)をします
    • 精神疾患や心理療法の技法などについての適切な情報提供(心理教育)を行います

認知行動療法に取り組む上での留意点は?

  • 認知行動療法についての理解を深め、患者さんが自ら主体的に取り組んでいくことが重要です。私たちカウンセラーが最大限サポートいたします。
  • 認知行動療法の効果を高めるために、毎週定期的・継続的にカウンセリングをご利用いただくことをお勧めします。
  • カウンセラーとの専門的な関わりのもと、チームとして取り組んでいきます。
  • 治療効果を高めるためには、日常生活におけるワーク(アクションプラン)の実行をはじめ、積極的な関わりが大切です。
  • 保険診療の対象ではないため、料金が全額自己負担となります。
  • 精神症状や希死念慮が強い場合などは、ご相談をお受けできない可能性があります。

認知行動療法にはどのような技法がありますか?

以下をはじめ、とても多くの技法があります。ご相談を通じて、カウンセラーから適切なものを紹介・提案させていただきます。

  • 行動活性化
  • 問題解決技法
  • 行動実験
  • 認知再構成
  • アサーション(自己主張訓練)
  • エクスポージャー
  • ハビット・リバーサル
  • マインドフルネス
  • イメージ書き換え法
  • コーピングカード
  • 段階的課題設定
  • 服薬アドヒアランス
  • 睡眠日記
  • メリット・デメリット法
  • プロンプティング
  • 自己報酬マネージメント
  • 呼吸の再訓練法
  • 注意持続訓練
  • 「生きる理由」リストの作成
  • シェイピング法
  • トークンエコノミー法
  • 社会的技能訓練(ソーシャルスキルトレーニング/SST)
  • モデリング
  • セルフモニタリング法
  • セルフコントロール法

「自動思考」、「反芻思考」とは何ですか?

自動思考は、その瞬間瞬間に自動的に湧き上がっては消えていくイメージや考えのことです。1日に何万回も繰り返されるといわれています。うつや不安などの影響で、過度にネガティブな自動思考が繰り返されてしまっている状態は反芻思考と呼ばれます。思い当たる状況がありましたら、ぜひご相談ください。

「スキーマ」とは何ですか?

スキーマは、「生まれ持った遺伝的な特性や、幼少期からの体験、生育歴などの影響を受けて形成されてきた考え方や信念」のことで、「中核信念」とも呼ばれます。自動思考に影響を与えるといわれています。
スキーマの例として、次のようなものが挙げられます。

  • 「親の期待に応えなければ認めてもらえない」
  • 「優秀でなければ自分には価値がない」
  • 「他人に頼ることは迷惑を掛けることだ」

このようなスキーマの修正については、特に専門性が求められますので、カウンセラーに相談いただければと思います。症状の改善だけでなく再発予防に対しても効果的なことが明らかになっています。

認知行動療法が適用となる疾患は?

うつ病、不安症、強迫症、心的外傷後ストレス症(PTSD)、食行動症または摂食症、パーソナリティ症、統合失調症などに対して有効性が示されています。
ただし、精神症状や希死念慮が強い場合などは、薬物療法や環境調整などの他の支援方法を優先する必要があります。
また、精神医療分野の他にも、身体疾患や生活習慣、産業保健分野、教育分野、司法矯正分野などにわたって多方面で幅広く活用されています。

精神疾患別の認知行動療法についての公的な資料はありますか?

以下のウェブサイトなどに、認知行動療法のマニュアルが掲載されています。

認知行動療法のカウンセリングを受ける上で考えられるデメリットは?

相談者によっては以下のような点が、デメリットとして感じられるかもしれません。

  • 「カウンセリングの回数が多く、期間が長い」
  • 「治療の効果が感じられるまでに時間が掛かる」
  • 「カウンセリング費用がかさむ」
  • 「主体的・積極的な関わりが求められる」

認知行動療法の副作用は?

副作用の心配なく取り組んでいただけます。
また、通院治療(薬物療法)との併用によって、治療効果が高くなることや、再発予防効果もあることが認められています。

認知行動療法のメリットは?

認知行動療法を通じて得られる効果・メリットとして、次のようなものが期待できます。

  • 精神疾患の予防、症状の緩和・改善、治療効果の向上、再発予防
  • 自己対処スキル(コーピングスキル)の獲得・強化
  • メンタルヘルス不調の予防、緩和・改善、再発予防
  • メンタルヘルス状態の維持・向上
  • 望ましい(適応的な)行動習慣・生活習慣の獲得
  • 適応的なコミュニケーションスキルの獲得
  • 良好な人間関係の構築
  • 自己肯定感・自己効力感・自尊心の底上げ

認知行動療法はどのような人に向かないですか?

認知行動療法では、自分自身のものごとの捉え方や考え方などについて、主体的かつ客観的に振り返り、徐々に変容させていくことが求められます。そのため、強い抵抗感や精神症状が出ていて難しい場合は、薬物療法などが優先される可能性があります。
また、認知行動療法についての知識を獲得し理解を深められたとしても、日常生活場面における実践が不足してしまうと、適切なスキルの獲得が不十分になってしまいます。そのため、積極的・精力的に取り組む姿勢が求められます。

認知行動療法は保険適用ですか?

一定の要件を満たした場合、保険適用となります。
社会的な要請を受け、様々な研究を通じて認知行動療法の効果が実証されてきた結果、2010年より「うつ病等の気分障害」、2016年より「強迫症、社交不安症、パニック症、心的外傷後ストレス症」、2018年より「神経性過食症」に対する認知行動療法が、一定の要件を満たした場合に保険診療の対象になっています。

こころケアの認知行動療法のカウンセリングには保険がききますか?

現在、こころケアのカウンセリングは保険適用外です。

認知行動療法には即効性がありますか?

薬物療法に比べて、認知行動療法には即効性はありません。
じっくりと継続的に取り組んでいくことで、効果を実感できるようになります。

認知行動療法の目標は何ですか?

患者さん自身が、認知の偏りに客観的に気づいて修正したり、望ましい行動を増やしたりできるような、自己対処スキルを獲得していくことです。
どのような状況でどのように考えたり、行動したりすることが、自分自身にとって望ましいのかを見出し、実践していけるようになることを目指します。

うつ病に認知行動療法は有効ですか?

薬物療法と同等の効果があります。また、薬物療法と併用すると改善率が上がり、治療中断率を下げることが確認されています。さらに、治療終了後も効果が持続することが報告されています。
多くの研究により効果が実証され、諸外国のうつ病の診療ガイドラインでは、薬物療法と並んで推奨しています。

認知行動療法の基盤となる理論は?

「認知行動モデル」が挙げられます。ある「出来事」をきっかけに瞬間的に生じるイメージや考えである「認知(自動思考)」が「気分・感情」「行動」「身体的な反応」と相互に影響しているという理論です。
「認知」「気分・感情」「行動」「身体的な反応」の4つのうち、「気分・感情」と「身体的な反応」の2つは、意識的に変えることは難しいです。その一方で、「認知」と「行動」の2つは、意識することで認識し、望ましいものに切り替えることが可能になります。その相互作用によって「気分・感情」「身体的な反応」の2つの改善を促します。

例えば、『職場の飲み会に自分だけ誘われなかった』という出来事を想定してみます。『自分はみんなから嫌われている』という考え「認知(自動思考)」が浮かび、不安や抑うつ、悲しみ、寂しさなどの「気分・感情」が強くなります。さらに、『仕事が手に付かない』『消極的・引っ込み思案になり、職場のコミュニケーションが減る』『職場に行きづらくなる』などの「行動」につながります。その結果、『自分はやっぱり、みんなから嫌われているんだ』『自分はだめだ』『自分には価値が無いんだ』というように「認知」をネガティブに歪めてしまうことにつながります。
例のように、「認知」「気分・感情」「行動」「身体的な反応」の4つの間で負の連鎖が起きている状態に対して、認知行動モデルでは、「認知」の妥当性を検討し修正したり、非機能的な行動の替わりに望ましい行動を増やしたりすることで、負の連鎖を断ち切ります。
『飲み会に誘われなかったのは本当に自分だけだったのか』『どのような集まりや目的の飲み会だったのか』『誘われなかった理由は嫌われている意外に考えられないか』『忙しさや体調、家庭事情などに配慮されて誘われなかった可能性はないか』など、その場面をカウンセラーと一緒に客観的に振り返りし、適切な認知や行動について検討していきます。

認知の偏り・歪みは誰にでもあるものですか?

認知の偏りは、誰にでもあります。しかし、その偏りや歪みが過度になってしまうと、メンタルヘルス不調のリスクが高まってしまいます。

認知の偏り・歪みはなぜ悪いのですか?

認知の偏りや歪みが続いている状態に対して適切な対処ができないと、悪化し、ぐるぐると繰り返される反芻思考の状態に陥ってしまいます。様々な精神疾患につながるリスクがありますので、ぜひ一度、ご相談いただければありがたいです。

認知の偏り・歪みの例は?

認知の偏り・歪みには、以下のような例が挙げられます。

  • 感情的な決めつけ
    • 証拠無しにネガティブな結論を引き出しやすい状態
    • 例)友人から一日返信がない ⇒ 「嫌われたに違いない」と思いこむ
  • 選択的注目(心の色眼鏡)
    • ポジティブなことも多くあるのに、ネガティブなことに注意が向いてしまう状態
  • 過度の一般化
    • わずかなことから広範囲のことを結論づけてしまう状態
    • 例)1つでも上手くいかないことがあると、「自分は何1つできない」と考える
  • 拡大解釈と過小評価
    • 自分の失敗など都合の悪いことは大きく、よくできていることは小さく捉える状態
  • 自己非難(個人化)
    • 自分に関係のないことまで自分のせいだと考え、原因を必要以上に自分に関連づけて、自分を責める状態
  • 「0か100か」思考(白黒思考・完璧主義
    • 白黒をつけないと気が済まず、非効率なまでに完璧を求める状態
    • 例)取引は成立したのに、期待していた価格ではなかった、と自分を責める
  • 自分で実現させてしまう予言
    • 否定的な予測をして自己の行動を制限し、その結果失敗してしまい、否定的な予測をますます信じ込むという悪循環に陥った状態
    • 例)「誰も声を掛けてくれないだろう」と引っ込み思案になることで、ますます声を掛けてもらえなくなる

認知行動療法は一人でできますか?

医師やカウンセラーなどの専門家とともに行うだけではなく、一人で取り組んでも効果があります。そのための書籍やウェブサイト、アプリなども充実してきています。
一人で取り組んでいるものの、効果が感じられなかったり、改善が得られなかったりするような場合には、ぜひカウンセラーにご相談ください。