パニック障害(パニック症)とは
パニック障害(パニック症)とは、パニック発作と呼ばれる発作が突然、繰り返し起こることにより、不安や恐怖感が増し、日常生活や社会生活に支障を来してしまう病気です。
パニック発作は、動悸や胸の痛み、急な息苦しさ、汗、震えなど、身体的な症状が現れることが特徴です。通常10分以内にピークを迎え、その後少しずつ和らいでいきます。しかし、パニック発作の渦中にある本人は「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどの、非常に強い恐怖を感じることがあります。
18歳~40歳頃(青年期後期~成人期早期)の発症が多く、女性が男性の2倍ほど多い傾向があります。
早期に専門医療機関につながることで、大きく改善させることが可能な病気であるといわれています。
パニック障害の症状について
パニック障害に特徴的にみられる症状として、パニック発作の他に、予期不安が挙げられます。
また、広場恐怖と呼ばれる症状を伴うことも多くあります。
パニック発作
パニック発作は、場所や時間を問わず、急激に出現することが特徴です。通常10分以内にピークを迎え、数分~数十分で収まります。本人にとっては死の恐怖を感じることもあるほど重大で切迫したものですが、医学的には危険ではなく、パニック発作自体で死んでしまうことはないとされています。
パニック発作の症状には、次のような身体的な症状、精神的な症状が挙げられます。
パニック発作の身体的な症状
- 動悸、心拍数の増加
- 息切れ、息苦しさ
- 窒息感
- めまい、ふらつき感
- 震え
- 寒気、ほてり
- 発汗
- 吐き気、腹部不快感
- 胸の痛み、胸部不快感
- しびれ
パニック発作の精神的な症状
- 死んでしまうのではないかという恐怖
- 正気でなくなる、自制心を失うことへの恐怖
- 違和感、現実感消失、離人感(自分を外から見るような感覚)
予期不安
パニック発作を経験した後、発作時のつらさや苦しさ、恐怖などから「また発作が起きるかもしれない、発作が起きたらどうしよう」と不安に襲われることがあります。この不安を「予期不安」と呼びます。
予期不安を感じることで、電車や人混みを避ける、頼れる人がいない状況や一人で出かけることを避ける、あるいはエレベーターなど逃げられない場所を避けるようになることがあります。
パニック発作は心臓や呼吸等の激しい(命にかかわるのではないかと感じるような)症状がみられるため、このような不安を感じやすいです。不安が強くなれば外出ができなくなったり、会社や学校に行けなくなったりする場合もあります。
広場恐怖
パニック障害には広場恐怖をともなう場合があります。
広場恐怖とは、すぐに逃げられない場所にいることに対して恐怖を感じることです。エレベーターや窓のない部屋、トンネル、電車や飛行機等の公共交通機関のなか等の閉鎖空間に恐怖を感じるようになります。また、そのような場所に行くことを避けたりすることもあります。
パニック障害の原因について
繰り返す発作は不安や恐怖等で起こります。最初に発作が起こる原因は過労やストレスからといわれています。強いストレスを感じてしまうと脳内の情報伝達の際に必要な神経伝達物質と呼ばれる物質のうち、特にノルアドレナリンが増加し、神経が異常に興奮してしまいます。これが起こると、ストレスに対する防衛反応として強い動悸や呼吸困難などが起こることもあります。また、ノルアドレナリンの増加により、これを静めようと別の神経伝達物質であるセロトニンが減少します。こうしたセロトニン量が変動する時には、気持ちが不安定になりやすくなり、結果パニック発作につながります。
パニック障害の診断について
パニック障害の診断には、以下の13項目が挙げられています。発作時には、全て症状が同時に見られ、ピークは10分以内に達し、その後30分くらいで症状は落ち着きます。なお、診断基準としては4つ以上の症状が揃った場合をパニック発作、症状が3つ以下の場合は症状限定性発作とされますが、過去の発作などの状況も伺うと、実臨床上で遭遇するパニック発作は、多くがパニック障害に当てはまります。
パニック発作の基準について
A 繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、唐突に激しい恐怖あるいは強烈な不快感の高まりが数分でピークに達し、その時間内に下記症状が(4つ以上)起こる
- 腹部不快感または胸の痛みがある
- 腹部の不快感または嘔気がある
- 心悸亢進または心拍数増加がある、動悸がある
- 息苦しさまたは息切れ感がある
- 窒息感がある
- 震えまたは身震いがある
- 冷感または熱感がある
- 発汗がある
- うずき感または感覚麻痺がある
- 死に対する恐怖がある
- ふらつく感じ、めまい、頭が軽くなる感じまたは気が遠くなる感じがある
- 現実でない感じまたは自分自身から離れているような感覚がある
- 気が狂うことに対する恐怖またはコントロールを失うことに対する恐怖がある
B 発作のうち少なくとも1つは、以下の1つあるいは両者が1か月あるいはそれ以上続く
- さらなるパニック発作または、その結果について不安・心配が続いている
- 発作に関連し、それを避けるような行動・生活が見られる
C 物質が関連した症状ではない
D この障害は、他のこころの病気に付随した症状ではない
パニック障害の治療について
パニック発作を起こさないようにするお薬とカウンセリングを中心に、環境調整や社会資源の活用も視野に入れて組み立てていきます。
先ずは予期不安を軽減してパニック発作を抑止するため、患者さんの状態に合ったお薬の投与を考慮します。患者さんは診断基準にもある通り、特に治療開始時はほとんどの方は、多かれ少なかれ発作再燃への不安・恐怖を持っていらっしゃいます。お薬を使っていくと、こうした不安も和らぎますので、さらなる治療として、カウンセリングに進んでいきます。カウンセリングでは、パニック発作を起こすにあたり「取り返しがつかない」「死に至る」といった、誤った考え方(認知)があるため、その考え方を少しずつ修正していきます。
またその患者さんが持つ比較的軽度なパニックを起こす原因から、その状況を実際に再現し、発作を起こさないような経験を重ねることで恐怖感を克服される方もいらっしゃます。
患者さんの状況に合わせて無理をせずに治療を行い、回復を目指していきます。