不眠症とは
睡眠障害では、寝付けない、眠りが浅い、すぐに目が覚める等の様々なタイプがあります。概日リズム睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群等が原因になる場合もあります。このような疾患によって睡眠障害が起こっている際に睡眠薬を飲むことは悪影響になる場合もあります。
アレルギーによってかゆみが不眠につながる場合もあります。うつ病等の心の病気では睡眠障害がみられる場合もあります。睡眠の質を良くするだけでなく原因になる疾患に対する治療が重要です。睡眠についての悩みもお気軽にご相談ください。
不眠症の症状について
主に睡眠障害は入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つのタイプに分類できます。これらの4つのタイプは、複数重なってみられることも多いのが特徴です。特に、高齢者の場合は、複数の症状を訴える方が多い傾向にあります。タイプによって対処法や治療法が変わってきます。ご本人の不眠の症状がどのタイプに当てはまるか知っておきましょう。
入眠障害
布団に入ってもすぐに寝付けず、眠るまでに30分~1時間以上かかります。それを不快に感じる状態です。不眠症の訴えに多くみられます。緊張や不安が強い際に起こりやすいです。
中途覚醒
睡眠中に何回も目が覚めて、その後すぐに寝付けない状態です。加齢と共に眠りが浅くなって目覚めやすくなります。日本人の成人の不眠の中で最も多いです。中高年や高齢者に多いといわれています。
早朝覚醒
自分の望む起床時刻より2時間以上早く目覚める状態です。加齢と共に体内時計のリズムにずれが生じやすいです。若年者に比べて遅くまで起きているのが辛いため、早く就寝して早く起きるようになります。これは高齢者にみられます。また、うつ病にもよくみられるといわれています。
熟眠障害
睡眠時間は確保できているのにぐっすり眠ったように感じられない状態です。寝ている間に足がぴくぴくと動く周期性四肢運動障害や睡眠時無呼吸症候群等の睡眠中に症状がみられる病気と関係している場合もあります。睡眠時無呼吸症候群とは、就寝中に呼吸の障害が起こって睡眠の量と質が悪くなります。
日中に強い眠気がみられる場合が多く、一部の耳鼻科・呼吸器内科で行われている検査が必要になります。一方、周期性四肢運動障害とは、就寝中に足がぴくぴくとした動きを何回もします。ご本人は眠りが浅いと感じる場合が多いです。これらの睡眠障害は、ご本人は気付きづらいため注意が必要になります。また、他のタイプの不眠症があることも多いです。
不眠症の原因について
不眠症の原因には、身体的要因や心理的要因、生活習慣的要因、環境的要因等があります。それらが重なり合って発症するといわれています。現在、日本で睡眠について何らかの問題をお持ちの方は、成人の約5人に1人いるといわれています。近年、不眠症に悩まれている方は増えています。
その背景には、生活リズムの乱れや情報量が多いこと、ライフスタイルの多様化、過度なストレス、高齢化等があります。
身体的要因
皮膚炎によるかゆみやホルモンバランスの変化、頻尿が関係します。また、アトピー性皮膚炎や更年期障害、前立腺肥大等からみられる場合が多いです。
心理的要因
人間関係等の悩みや不安、イライラすることが関係します。
生活習慣的要因
飲酒や喫煙、カフェインを過剰に摂り過ぎることが関係します。近年、就寝前までスマートフォンを使用していることによって入眠障害も増加しています。ストロング系アルコール飲料やエナジードリンク等も睡眠障害を引き起こすきっかけになります。また、夕方以降のコーヒーや紅茶の摂取等も不眠につながります。
環境的要因
季節が変わったり、引っ越し、転職等の環境の変化、異動や入学も関係します。
不眠症の診断について
下記の質問項目のうち当てはまる症状はありますか?
- 夜間ぐっすり眠れない
- 以前よりも寝付きづらい
- 1度眠っても翌朝起きるまでに何回も目が覚める
- 就寝前にスマートフォンやパソコン、ゲームをすることが多い
- 睡眠時間は確保できているが眠りが浅くて熟睡感がない
- ぐっすり眠れないため、疲れやすくてやる気が出ない
- 集中力や注意力や記憶力が悪くなって日常生活に支障が出る
- 日中に睡魔に襲われる
- 頭痛や胃腸の痛み、肩こり等がみられる
- イライラしたり気分が落ち込んだりする
- また眠れないのではないかと睡眠に関することが気になる
複数の項目に該当する際は不眠症かもしれません。ぜひ専門医療機関にご相談ください。
睡眠障害の4つのグループ
睡眠障害の分類には、米国睡眠障害センター協会の分類があります。この分類は下記の通りです。
精神生理学的要因による不眠
不眠の中で最も多くみられます。時差のある地域に飛行機での旅行や精神的ストレス、外科的手術のための入院等のストレス状況に対しての一時的な反応としてみられます。
精神障害による不眠症
心療内科、精神科領域では最も多くみられる不眠症です。うつ病やうつ状態、神経症、他の精神疾患の症状としてみられます。
アルコール飲酒や薬物使用による不眠
慢性的なアルコール依存や薬物依存によるものです。アルコールは寝酒として飲んでいたのに、やがて飲酒しないと眠れなくなって次第に飲酒量が増えます。寝つきは良いけれどすぐに覚めてしまって再び飲酒するという悪循環を繰り返します。
身体疾患や中毒性疾患等による不眠
夜中の不整脈や呼吸困難、発熱、喘息、咳、かゆみ等の不快感や身体的な苦痛のために不眠になる場合があります。この際は内科的な診断と治療が必要になります。まれに、肥満に伴う睡眠時無呼吸症候群や特発性周期性四肢運動等によって中途覚醒の不眠がみられる場合があります。
不眠症の治療について
身体疾患や中毒性疾患等による不眠には、鉄欠乏症、肝障害・腎障害・糖尿病などが関係している場合もあり、まずは内科的な検査・治療が望ましいとされます。ここには、睡眠時無呼吸症候群や特発性周期性四肢運動等も含まれており、睡眠ポリグラフ検査など、一部の耳鼻科・呼吸器内科で行われている検査を必要とする場合もあります。こうした身体的な問題に起因する不眠はそちらの治療だけで不眠も改善することはめずらしくありません。
当院で治療にあたっていくのは、これ以外の不眠症となります。しかし、実際は不眠症はこちらの方が多くみられます。睡眠障害、不眠症については生活指導と、必要であればお薬を少量用いて治療を進めていきます。生活指導では体内時計の調節を目的とし、現在生活リズムを乱していると思われる原因を浮き彫りにして、改善をしていきます。
睡眠障害や不眠症の原因が過大なストレスによるもの、もしくは眠れないこと自体が生活する上で過大なストレスを与える場合があり、そういった場合には別の精神疾患に罹患する場合もあります。そういった場合には入眠しやすくなる薬物や、ストレスや不安を軽減する抗不安薬や抗うつ薬を用いる場合もあります。
現在、「眠れること」を掲げた市販薬も多く存在しますが、長期の使用はお勧めできません。「眠れないこと」が心理的に負担になっている場合、主治医への早期の相談をお勧めします。