精神科クリニックとカウンセリングの併用がお勧めです
精神科クリニックの通院治療効果を高めるとともに、再発予防のためのスキルを獲得するために、副作用のないカウンセリングを併用されることをお勧めいたします。
精神科クリニックの実情
精神科クリニックにおける医師の診療内容は、診察・診断・薬物療法が中心です。
初診は、30分を超えて診察・診断を行ない治療計画を立て、必要に応じて薬物療法を開始します。再診は、5分超の時間で、お薬の調整などを行います。
そのため、再診以降も医師が時間をかけて「カウンセリング(精神療法)をしてくれる」「話を聴いてくれる」ことを期待されている患者さんにとっては、ギャップを感じることも少なくないでしょう。多くのクリニックでは、医師がカウンセリング(精神療法)に充てられる時間は限られてしまっています。
診療時間には、下の表のような診療報酬制度が影響しています。
出典) 厚生労働省の資料を参考に、株式会社ドクターブリッジにて作成
診療報酬制度上、初診は30分、再診は5分を超える必要がありますが、患者さん一人あたりに、それ以上時間をかけることは、クリニックの経営上の観点からも難しくなります。そのため再診以降は、限られた時間の中で薬物療法が中心になります。それによって問題なく寛解(治癒、完全寛解)していく患者さんがいる一方で、カウンセリングを併用した方が、治療効果や再発予防効果が上がる患者さんもいます。そこで医師によっては、カウンセリングを勧めることがあります。
カウンセリングを重視して、クリニック内で実施しているところもあります。しかし、最も科学的根拠(エビデンス)が確立されたカウンセリング技法である「認知行動療法」の実施率についての調査(「日本の精神科診療所における認知行動療法の提供体制に関する実態調査」2016年~2017年)結果を参照すると、1割未満となっています。
その背景には、次のようなハードルをクリアすることの難しさがあると考えられます。
- 診療報酬化の進んでいない心理士を雇用すること
- 雇用した心理士を時間の掛かるカウンセリング業務に従事させること
- 専用の相談室など、カウンセリングに必要なハード面を整備すること
- 認知行動療法についての専門性や経験の豊かな心理士を採用すること
クリニックのリソースを割いてカウンセリング(認知行動療法)の提供体制を整えることには、限界があるといえるでしょう。
カウンセリングの実情
次に、国内におけるカウンセリングの実情についてみていきましょう。
カウンセリングを担う国家資格専門職として、公認心理師が挙げられます。しかし、2017年に資格が創設されて歴史が浅いこともあり、診療報酬化は、制約の下に徐々に始まりつつあるものの、まだまだ不十分です。
したがって、現在はほとんどの場合が保険適用外で、全額自己負担です。1回あたり40分~90分で、安くても5,000円前後、高い場合は10,000円を超えるものも少なくありません。さらに、カウンセリングは、回数を重ね継続することで効果が発揮されるため、合計費用は高くなります。厚生労働省の認知行動療法のマニュアルを例にすると、十数回以上が推奨されています。費用感や、心のスキルを鍛える面などに着目するのであれば、「心のパーソナルトレーニング」という形容も当てはまるのかもしれませんね。
通院治療(薬物療法)による効果を高めるだけでなく、副作用のおそれなく、再発予防効果も期待される対処スキル(コーピングスキル)を身に付けるためには、公認心理師によるカウンセリングを受けることをお勧めいたします。
薬物療法を中心としたクリニックの通院治療によって回復が進んでいく方もおられますが、思うような改善がみられない方は、ぜひ、カウンセリングのご利用をご検討いただければ幸いです。