コラム

毒親とは?原因や特徴、子どもに与える影響、毒親に対する対処法を解説

親子

「毒親」という言葉を耳にするようになり、「自分の親も毒親なのでは?」と親との関係性で悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

毒親は、子どもを過剰にコントロールしたり、不機嫌な態度や暴力で子どもを抑圧して支配したりするような、子どもにとってマイナスな行動を繰り返す親とされています。今回は、そんな毒親や毒親のもとで育った人の特徴を解説します。毒親との関係を改善する対処方法についてもご紹介しているので、親との関係性に悩んでいる人は参考にしてみてください。

毒親とは

近年よく耳にするようになった「毒親」ですが、その始まりはアメリカ人医療コンサルタントのスーザン・フォワードが1989年に執筆した著書『毒になる親(Toxic Parents)』にあります。そのなかで初めて「毒親」という言葉が使われました。

「毒になる親」とは、子どもに対してマイナスとなるような行動パターンが執拗に繰り返され、それによって子どもの人生を支配しているとされています。毒親と呼ばれる人の行動パターンは、子どもの行動すべてを管理して思い通りにしたいといった過干渉から、暴言や暴力のような虐待に至るまでさまざまです。

「毒親」は、厳密には医学的な専門用語ではなく、世間的な概念であるとされています。そのため、毒親の定義も明確ではありません。日本において、毒親の概念を広めた一人である漫画家の田房永子さんは「あなたが両親との関係をしんどいと感じているならば、あなたの両親は毒親である」と定義しています。

毒親になってしまう原因

スーザン・フォワードの著書のなかでは、「この世に完全な親などというものは存在しない」とされています。もちろん親も人間であるため、どんな親も完璧ではないことでしょう。ではなぜ「毒親」にまでなってしまうのでしょうか。毒親になる原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 毒親の親も毒親、もしくは機能不全家族のもとで育った

  • 夫婦仲や家族仲の悪い環境である

  • 教育に熱心に取り組む親である

自身の親も毒親だった人や、機能不全家族のもとで育った人の特性は、世代間連鎖しやすいとされています。親になったときにどのように子どもを育てたらよいのか、子どものころに体験した親のやり方を無意識に模倣することがあるためです。たとえ、嫌だと感じていた親のふるまいをしないようにと思っていても、無意識のうちに繰り返してしまっていることがあります。

また、夫婦仲が悪かったり、家族から育児の協力が得られなかったりといったストレスを抱えていることも原因のひとつになりえます。そういったストレスによる感情のコントロールができない場合、子どもに対して理不尽に当たってしまうなど、子どもをストレスのはけ口とする可能性が高くなるのです。

現代社会における親と子どもの関係性も、原因のひとつといえるでしょう。習い事や塾など子どもの教育に対して熱心な親であればあるほど、子どもに向ける期待が高く、結果を出すためにも子どもをコントロールしようとします。子どもは、そんな親の期待に応えなければ、親から認めてもらえないと感じてしまいます。「教育ママ」と呼ばれる親は以前からいたものの、無条件で子どもを肯定してくれる祖父母の存在が近くにありました。しかし、核社会となった現代では、そのような役割を果たしてくれる大人が周りに少ないため、親からのプレッシャーを感じやすくなってしまう傾向にあるのです。

毒親の特徴

実際にどのような親が毒親とされるのでしょうか。具体的には以下のような特徴があります。

  • 過干渉・過保護

  • 子どもに対して無関心

  • 子どもに対する心理的攻撃

  • 子どもに対して支配的

  • 子どもに対する暴力

これらの毒親に見られる共通点は、子どもを支配したがる点だといえるかもしれません。それぞれ詳しい特徴を見ていきましょう。

過干渉・過保護

子どもの行動を過剰にコントロールしようとする過干渉・過保護は、毒親のなかでもっとも多いとされています。子どものことを心配するあまり、過干渉や過保護になってしまう親は少なくないでしょう。しかし、毒親となる人は子どものことを思ってではなく、自分の不安を解消するために子どもをコントロールして安心感を得ようとするのです。

たとえば、自分が安心したいがために、子どもが成長してひとりで行動できるようになっても、「心配だから」と誰とどこで何をしているのか、必要以上に把握することを求めます。

また、「あなたにはできるはずがない」と子どもの成長を認めず、先回りして必要以上に世話を焼きたがります。ひどい場合には、子どもが描いている絵を「こんなんじゃダメ!」と奪い取って、もっと良いアイデアがあると描き直してしまうようなことも。

「あなたのためを思って」と子どもの進路についてプレッシャーをかけ、勝手に塾に通わせはじめたり、受験先を決めてしまったりすることも、毒親の特徴に当てはまるでしょう。

【過干渉・過保護な毒親がよく取る行動】

  • どこで誰と何をしているのか知りたがる、情報共有を強制する

  • 必要以上に身の回りの世話を焼いて甘やかす

  • 子どもの進路や就職先、恋愛・結婚などに口を出してくる、勝手に決めてしまう

無関心

過干渉・過保護の毒親とは反対に、子どもに対して全く目を向けずに無関心すぎる親も毒親とされます。ひどい場合は身の回りの世話でさえ放棄して、ネグレクトになるケースもあります。「妹や弟ばかり世話を焼いていて、自分は構ってもらえなかった」といったケースや、「出来の良い兄弟ばかりを大事にして、自分はいつも無視されていた」というケースです。

とくに、母親は同姓である女の子だからこそ、言わなくても母親のことを理解してくれる、同じように手伝ってくれると過信してしまう部分があるため、子どもからすると都合の良いときだけ使われると感じることが多い傾向です。

また、子どもを放って仕事ばかりしているといった場合も、無関心な毒親になりえます。仕事依存の父親がいる場合、母親が夫婦関係をあきらめて子どもに過干渉になってしまうというケースも多いです。

【子どもに対して無関心な毒親がよく取る行動】

  • 他の兄弟ばかり世話を焼いている

  • 仕事や趣味に依存しすぎて子どもの世話をしない

子どもに対する心理的攻撃

毒親のなかには、言葉や態度によって心理的に悪影響を与える親もいます。たとえば、子どもが大変だったことやつらいことを共有しても、「自分のほうが大変だ、そんなことは大したことじゃない」と競うように自分の話題にすり替え、子どもの主張を認めません。子どもが成長したことや頑張ったことに対しても同様に認めず、嫉妬から侮辱する親もいます。

また、過剰な干渉や必要以上の世話なども、「あなたのためを思って」と押し付けることで、親のことを「嫌だ」と思わせる子ども自身に罪悪感を植え付け、心理的に攻撃するのです。

【子どもに心理的攻撃をする毒親がよく取る行動】

  • 子どもの話をさえぎって否定したり、自分の話題にすり替えたりする

  • 「あなたのためを思って」と押し付けて罪悪感を抱かせる

子どもに対して支配的

子どもの言動が自分の思い通りにいかないと、明らかに不機嫌になったり、ため息をついたり、態度で子どもを抑圧してコントロールしようとするケースもあります。過干渉・過保護な毒親とも共通しますが、自分の子どもに理想を抱き過ぎているため、子どもの言動や行動を必要以上に管理・支配しようとするのです。

毒親は、「子どものためを思って」と支配的な行動を正当化しがちです。しかし、実際は親の支配欲や世間体のためであることに親は気づきません。このような毒親は、子育てを生きがいとしていることが多く、子どもが自立すると存在意義を見出せなくなるため、子離れができず、子どもが成人しても管理したがる傾向があります。

【子どもに対して支配的な毒親がよく取る行動】

  • ため息や不機嫌な態度で子どもを抑圧する

  • 自信の言動を「子どものため」と正当化する

子どもに対する暴力

毒親の最たるものが、子どもを虐待する親でしょう。子どもへの暴力や暴言、性的虐待は心身ともに傷つけるだけではなく、脳機能にも影響を与える可能性があるといわれています。いずれも暴力によって子どもを支配しようとしたり、子どもをストレスのはけ口にしたりします。また、暴力の対象は子どもだけではありません。配偶者や高齢の親など、弱い家族が暴力を受けているのを見せつけたり、暴力的な態度をとったりすることによって、恐怖で支配しようとします。

暴力を振るう毒親は自分を特別で優秀な人間だと思い込んでいることが多く、「しつけのための愛情だ」と暴力を正当化している場合が多くあります。家庭では横暴な態度を取っていても、外では問題のない人格に見えるということも珍しくありません。

【子どもに対する暴力を働く毒親がよく取る行動】

  • しつけや愛情だと正当化して暴力をふるう

  • 暴力的な態度で恐怖を植え付ける

毒親に育てられた人にみられる特徴

それでは、毒親に育てられることによって、子どもにどのような影響があるのでしょうか。ここからは毒親に育てられた人に見られる特徴をチェックしていきましょう。

人や物に依存しやすくなる

毒親に育てられた子どもは、親に否定されてきた経験によって自尊心が低く、自分以外の誰かを頼って生きようとします。そのため、友人や恋人などに依存して過剰に愛情を求めたり、自分のことを決めてもらおうとしたりするなど、親代わりの役割を求めがちです。

また、親の愛情不足から満たされない心を物で満たそうとすることもあります。そのため、買い物やギャンブル、お酒など、依存度が高いものから抜け出せなくなる傾向にあります。

自分に自信が持てなくなる

毒親に育てられた子どもは、自己肯定感が低いという特徴があります。親から受けた否定的な言葉を受け入れ、無意識のうちに「自分はダメだ」と自身の評価を下げてしまうのです。

また、親の期待に応えるために完璧主義になる傾向があるため、少しでも失敗してしまうと強いストレスを感じてしまい、自信をなくすという悪循環に陥ってしまいます。

攻撃的な性格になることも

暴力やネグレクトなどの虐待を受けた子どもは、親から愛情を受けられなかった反動として、周りを試すようなわがままな態度や、攻撃的な態度を取ることがあります。

また、感情を他人とうまく共有することができないため、自分の感情を一定に保つことができず、衝動的に暴力を振るってしまうという問題も出てきてしまうこともあります。

毒親の母親がしんどいと感じることが多い

特に母親は、子育てに依存しやすく、子どもに過剰な干渉をしたり、過保護になってしまったりしやすい傾向です。そのため、父親よりも、母親が毒親となってしまうことが多くあります。

毒親は「あなたのため」「しつけのため」と正当化して、子どもをコントロールするので、子どももそれが当たり前と思いがちです。しかし、成長して親の行動に矛盾や違和感を持つことによって、親との関係性にしんどいと感じたり、苦しんだりするきっかけとなるのです。

毒親との関係に対する対処法

毒親との関係に悩んだときは、どのように対処したらよいのでしょうか。具体的には以下のような方法が挙げられます。

  • 親の言うことを気にしない

  • 親と距離を置く

  • 親との関係を断つ

  • カウンセリングを受ける

一番大切なことは、親から心身ともに距離をとることです。親と自分という狭い世界をいかに脱するかがポイントとなります。ここから詳しい対処方法について見ていきましょう。

親の言うことを気にしない

親から支配され、親が言ったことが絶対という世界で生きてきたため、子どもにとって、親の言うことを気にしないというのは簡単なことではありません。

まずは、親の言うことだけが世界のすべてにならないよう、自分の世界を広げることが大切です。そのためにも、親や自分とはまったく違うタイプの人と交流を持つことを意識してみると良いでしょう。今までの価値観が変わると、親との関わり方を考え直すきっかけになります。

親と距離を置く

親と物理的に距離を置くことも効果的です。自立するという強い意志を持ち、実家から離れた場所に住むのが良い方法です。

自立が難しいのであれば、親が家にいる時間は用事を作ってできるだけ会わないようにするなど、接触する機会を減らす工夫をすると良いでしょう。

親との関係を断つ

物理的な距離でも解決しない場合は、思い切って関係を断つこともひとつの手です。

今まで生活してきた場所を離れて、親との関係を断つとなると、不安や罪悪感を抱くこともありますが、毒親との関係から解き放たれるためには、強い意志を持って実行することも必要なのかもしれません。

親と離れて自分を大切にすることによって、それまでの親との関係を振り返ることができます。一度関係を断つことによって、改めて親とどのような関係を築きたいのか、気持ちを整理することもできるでしょう。

カウンセリングを受ける

毒親は、毒親自身の問題と向き合い、子どもを支配することを改善していく必要がありますが、そうした親の意識を変えることは簡単なことではありません。場合によっては、自分自身の感情や考え方と向き合うことで悩みを消化し、解消することができるケースもあります。たとえば、カウンセリングを受けることで自分自身と向き合うことができるため、親との関係性のトラウマの解消につなげられるでしょう。

まとめ

毒親に明確な定義はありませんが、親との関係をしんどいと感じているならば、あなたの親は毒親なのかもしれません。毒親に育てられた人は自尊心が低く、周りの人の顔色をうかがうようになるため、社会に出てからも生きづらさに悩む人も多くいます。今回ご紹介した特徴に該当する人は、親との関係を見直し、改善するためにも対処方法を試してみてください。

カウンセリングを検討されている人は、「こころケア」で毒親についてのご相談も可能です。「こころケア」はオンラインでカウンセリングを受けられるため、周りの目を気にせずに相談することができます。オンラインだからこその手軽さを利用し、毒親の悩みを打ち明けてください。

 

記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)