統合失調症の原因と主な症状とは?治療法や再発防止のポイントを紹介
統合失調症は、100人に1人が発症するといわれる身近な病気です。考えや気持ちがまとまらず、幻覚や幻聴などの症状がみられます。しかし、医療機関で適切な治療を受けることで、症状が改善されます。
今回は統合失調症の症状と、治療方法について詳しく解説します。再発させないポイントも説明しているため、参考にしてみてください。
統合失調症とは
統合失調症とは、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く病気です。10代~20代をはじめとして、100人に1人ほどが発症するといわれています。
思考や行動、感情の機能が長期にわたって低下します。原因は脳の機能にあると考えられていて、陽性症状と陰性症状に分けられます。早期から薬物療法とリハビリテーションを受けることで、落ち着いた生活を送れるでしょう。
統合失調症の要因はまだ解明されていない
統合失調症の要因は、まだ解明されていません。しかし、近年の研究では、大きなストレスなどによって、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれることが関係していることがわかっています。また、体質的な要因や環境的な要因が引き金となって起こることも指摘されています。
現在考えられている原因は一つだけではなく、いくつかのリスク要因が重なって発症することが明らかになっています。
統合失調症の症状
統合失調症の症状は、大きく分けて3種類の症状が見られます。
■統合失調症の症状
陽性症状 | 陰性症状 | 認知機能障害 |
---|---|---|
|
|
|
統合失調症は一日でも早く治療に取り組むことで、回復が早くなります。
統合失調症の治療方法
統合失調症の治療方法は、薬物治療だけではなく、作業療法やカウンセリングが挙げられます。
【統合失調症の治療方法】
- 薬物治療
- 作業療法
- 心理社会的治療
幻覚や妄想が強い場合は、薬物治療が中心になりますが、作業療法などとの組み合わせを早い段階から行うことが重要です。
薬物治療
統合失調症で処方される薬には、以下のようなものがあります。
抗精神病薬 |
抗精神病薬は、従来型と新規に分けられる
従来型:幻覚や妄想がなどの陽性症状に効果がある
<主な副作用>
新規型:感情の平板化、思考の貧困などの陰性症状に効果がある
認知機能障害への効果も期待できる
<主な副作用>
|
---|---|
抗不安薬 |
強い不安感や、緊張感を和らげる |
抗うつ薬 | 憂うつな気分を和らげ、意欲を高めるために使用する |
睡眠薬 | よく眠れない、寝つきが悪いなど、睡眠のリズムが一定ではない場合に使用する 医師との相談が必要で、原則として短期間や頓服での使用が推奨されている |
抗パーキンソン病薬 |
抗精神病薬によってドーパミンの働きが過剰に抑制されることにより生じる、手がふるえる、足がむずむずするなどを和らげるために使う
<主な副作用>
|
便秘薬 | 便通をよくするために使用する 抗精神病薬や抗パーキンソン病薬などの使用によりみられる副作用 重い便秘症になるとイレウスになるため、続くようであれば医師に相談が必要 |
作業療法
作業療法は、薬物療法の前からあり、古い歴史をもつ治療です。作業療法士の指導のもと、手工芸やパソコン、スポーツなどの軽作業を通じて、楽しみや充実感といった感情の回復を図ります。
また、作業療法にはSSTという日常生活や社会参加に必要な能力の回復を目的とした訓練が受けられます。たとえば、人に道を聞く場面を想定し、実際に自分が聞く側を演じます。訓練を繰り返すことで円滑な対人関係を築く方法がわかり、対応方法がわかるようになるのです。
心理社会的治療(カウンセリング・認知行動療法)
統合失調症の治療において、心理社会的治療も欠かせないものになっています。
- 心理教育:病気のことをよく知るための教育
- 生活技能訓練:社会復帰にむけたトレーニング
- カウンセリング
統合失調症は、急性期の陽性症状(幻覚・妄想)は薬物療法で改善することがありますが、薬だけでは陰性症状である認知機能障害の改善はできません。普通の社会生活を営めるようにするための治療として、心理社会的療法が重要になります。
認知行動療法を行っている医療機関を見つけるのは難しいですが、オンラインカウンセリングであれば、スマホとインターネット環境があり、プライバシーが守られ安心して話せる場所であれば、どこからでも受けることが可能です。
関連記事:認知行動療法とは?具体的なやり方や受ける前に知っておきたいことを解説
統合失調症を再発させないためのポイント
統合失調症は、再発しやすい病気です。再発することで、薬が効きにくくなり、これまでできていたことができなくなるなどのリスクがあります。治療をして回復しても、油断できないためポイントを覚えておきましょう。
【統合失調症を再発させないためのポイント】
- 回復した後も長期的な治療が必要
- 再発のサインを見逃さない
- 制度を活用する
回復した後も長期的な治療が必要
回復したからといって、治療をやめてしまうと再発リスクが高くなるため、長期的な治療が必要です。治療を中断して再発を繰り返すと、以下のようなリスクがあります。
- 精神機能や社会的な機能が低下
- 今までできていたことができなくなる
- 薬が効きにくくなる
- 回復に時間がかかるようになる
- 再入院になる
治療を続けて再発を防ぎながら、あなたの自分らしい生活を取り戻すことを「リカバリー(回復)」と呼びます。治療やリカバリーのことなど、気になることや不安があれば、医師に気軽に相談しましょう。
再発のサインを見逃さない
統合失調症が発症するときは、大体同じパターンで始まることがほとんどです。したがって、家族や周りの人は再発のサインを見逃さないようにすることも重要です。
統合失調症の再発要因は複数あります。薬の飲み忘れが習慣化するようなことは、要因の1つです。
再入院を防ぐためには、再発の始まりを見逃さないことが重要です。そのためには本人だけではなく、家族も再発の前兆を覚えておきましょう。再発サインの例は、以下のとおりです。
【再発サインの例】
- 眠れない日が続くようになる
- イライラしていることが増える
- 食欲が落ちている
- 不安の訴えが多くなる
- 落ち着きがなくなる
- うつ症状になり、考え込んだりする
- 疑い深くなる
- デイケアを突然やめて、仕事を探しだす
いつもと違う様子が見られたら、再発の可能性を視野に入れて受診をすすめましょう。
制度を活用する
統合失調症を再発させないためには、医療や福祉制度を活用することが重要です。以下のような制度を検討しましょう。
- 立支援医療(精神通院)制度
- 精神障害者手帳
- 障害年金
- 生活保護
- 就労移行支援事業所
特に、自立支援医療制度は、精神科の通院などにかかる医療費の自己負担を、1割に削減できる制度で、世帯所得により自己負担限度額が決まります。
また、病気の症状が安定してきたら、治療をしながら働き続けられます。無理せず自然に仕事復帰を考えられるようになったら、担当医に相談しましょう。
まとめ
統合失調症の症状はさまざまですが、治療を続けることで、症状の改善が期待されます。しかし、少しよくなったからといって、治療を止めてしまうと悪化や再発の恐れがあります。医師の指示に必ず従うようにしましょう。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平
国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)