コラム

「人と会うのが怖い」「人と話すのが怖い」「人と関わるのが怖い」と思ったりするのは、「社交不安障害（SAD）」かもしれません。社交不安障害とは、人との社交的な場面において、強い不安や恐怖を感じる心の状態のことです。この障害を抱える人々は人との関わりに極度の不安を感じ、日常生活に影響を与えることがあります。

本記事では、社交不安障害の特徴や症状について解説し、さらに効果的な対処法についても紹介していきましょう。

人が怖い・人と話すのが怖いと感じる原因は？病気のサイン？

人が怖いと感じたり、人と話すのが怖いと感じたりする原因はさまざま。一般的な要因は以下のようなもので、場合によっては病気のサインである可能性があります。

• 本来の性格によるもの

• 社交不安障害（SAD）によるもの

次の項でくわしく解説していきましょう、

性格によるもの

人の目が気になるのは、誰しも少なからずあるもの。しかし、心配の度合いは、性格によって変わります。

たとえば、人よりも不安や恐怖を感じやすい性格、恥ずかしがり屋、人見知りが激しいなどが挙げられるでしょう。もともと自己肯定感が低い性格で、他者との比較や自身の言動に対する過度のプレッシャーを感じる方は、「人と会うのが怖い」と感じる傾向があります。

また、過去にいじめを受けた経験があり、他者を信頼できない方は、人や人間関係に対して、恐怖感や警戒心を抱くこともあるでしょう。

社交不安障害（SAD）によるもの

日常生活に支障をきたすほど、人への恐れや不安を抱いている場合は、社交不安障害（社会不安症・対人恐怖症）かもしれません。「社交不安障害」とは、社会的な場面での過度の不安や恐怖感を伴う病気で、人との交流や公の場でのパフォーマンスに対して、強い恐怖心を抱くのが特徴です。具体的にどのような病気なのか、症状やセルフチェックの項目を詳しく見ていきましょう。

社交不安障害（SAD）とは

社交不安障害は、社会的な場面で過度の不安や恐怖、緊張を感じる病気のこと。英語では「Social Anxiety Disorder」と表現するため、SADと略されることもあります。

主な症状としては人前で話す、人との交流に参加する、人前で字を書くなど、社会的な場面において、強い不安や恐怖を感じることがあります。社交不安障害は、大勢の人がいるときに限らず、目上の人や異性、見知らぬ人など「人と関わるのが怖い」と、恐怖心を抱くのが特徴です。

人と関わる場面で、必要以上に「いつも誰かに見られている気がする」「悪口を言われている気がする」と不安になり「人と関わるのが怖い」と感じて、学校や仕事に行けず、家から出られない状態になることもあります。対人関係で自信がない状態が続くと、自己評価の低下や孤立感、うつ症状などが引き起こされるケースもあるのです。

社交不安障害（SAD）の症状

社交不安障害を持つ方は、以下のような症状を経験することがあります。

• 対人恐怖…人と会話をするのが怖いため、コミュニケーションがうまく取れず、孤立を感じる。

• 視線恐怖…人の視線が気になったり、自分の視線のせいで相手に不快感を与えていないか不安になったりする。

• 赤面緊張…人と話すときに顔が赤くなったり、人前で赤面するのではないかと怖くなったりする。

• 発汗恐怖…人と話すときに緊張して汗をかきやすい。ときには、周りから見ても分かるほど大量の汗をかくときもある。

• 自己臭恐怖…汗や口臭など、自身の体のにおいに対する異常な不安や恐怖感を抱く。

• 会食恐怖…自身の咀嚼音や食器を動かす音など、食事中の音が気になって、人と一緒に食事をするのが怖い。会食を楽しめないために、同席者に申し訳なさを感じる。

• 振戦恐怖…人前に立つと身体が震える、人と会うときに身体が震えるのではないかと心配になる。

• 排尿恐怖…公共のトイレや他人が近くにいる場所で、緊張して排尿ができなくなる。

• 書痙（しょけい）…人前で字を書く場面で、手が震えて字がうまく書けなくなる。

社交不安障害のセルフチェック方法

以下の一般的なチェックリストを参考にすることで、自身の症状や経験が社交不安障害に該当するかどうかを判断する手助けになるかもしれません。「あてはまる」と思った数が1〜20個の方は、やや社交不安障害、21個（6割以上）の方は、かなり高い社交不安障害の症状があると考えられます。

しかし、これはあくまでセルフチェックなので、正確な診断を受けるには、精神科の専門医に相談することをおすすめします。

□	自分は人見知りがはげしいです	□	自分はすごいはにかみやです
□	人前でとても緊張します	□	人前で顔がこわばる事があります
□	人前で体がこわばる事があります	□	人と向かいあいになるのが怖いです
□	人と会話するのが怖いです	□	人と視線を合わせるのが怖いです
□	人前で汗をかくのが怖いです	□	人前で顔が赤くなるのが怖いです
□	人前でどもるのが怖いです	□	人前で声がかすれたり、出にくくなるのが怖いです
□	人前で声が震えるのが怖いです	□	人前でバカな事を言ってしまわないか怖いです
□	人前で字を書く時、手が震えないか怖いです	□	人前で変な表情になってしまわないか怖いです
□	自分の顔、もしくはその一部（目、鼻、口など）が醜いと思っています	□	自分の体型、もしくは体の一部が醜いと思っています
□	自分は人の視線がとても気になります	□	自分は人前でオナラをするのが怖いです
□	自分の体から発する臭い（体臭、ガスなど）のせいで、人にイヤな感じを与えるのが怖いです	□	自分の視線のせいで人にイヤな感じを与えるのが怖いです
□	自分の恐怖心が人に移ったらどうしようと思います	□	他の人と同じ部屋で寝る時、寝言を言わないかとても不安です
□	他の人が話をしていると、自分の事を悪く言っているように感じます	□	他の人のちょっとした仕草が、自分にあてつけているように感じます
□	自分は人と一緒にする食事、会食が怖いです	□	自分は人が近くにいるとオシッコが出にくくなるのが怖いです
□	自分は人前で体が震えるのが怖いです	□	自分は人前で顔が青ざめるのが怖いです
□	自分は人前でツバを飲みこむのが怖いです	□	自分は人前でお腹が鳴ってしまうのが怖いです
□	自分の目付きが、異性にいやらしいと思われないか不安です	□	自分の側にいる人が視野に入るのが怖いです

引用：　NPO法人生活の発見会｜社交不安症（対人恐怖）チェックシート

社交不安障害の治療方法

社交不安障害の治療には、次のような療法が有効とされています。

• 薬物療法

• 認知行動療法

人が怖いと感じる「思考」や「行動パターン」を認識し、対処するためのスキルや戦略を身につけることが目標です。また、必要に応じて薬が処方されることも。

薬物療法

薬物療法は、医薬品を使用して治療を行う方法のこと。社交不安障害で用いられる薬物には、抗うつ薬の一種であるSSRI（選択的セロトニン再取り込み阻害薬）や、抗不安薬などがあります。脳内の神経伝達を調整する働きがありますが、めまいや吐き気などの副作用が出る場合も。そのため、副作用がなく安心して進められる治療方法として、認知行動療法が有効とされています。

認知行動療法

認知行動療法とは、ストレスやトラウマで凝り固まった考えや行動を修正していく治療法のこと。具体的には、ストレスを感じた出来事を取り上げ、自分の考え方、感情、身体の反応、行動を客観的に見直します。過度にネガティブな思考をしていたことに気づき、建設的な考え方に置き換え、感情や行動の改善を図るのです。

また、新しい行動を試すことで、問題の解決を目指します。認知行動療法を受けるには、専門の医療機関や担当医に相談し、専門家のもとで行うようにしましょう。

社交不安障害によって人が怖い・人と話すのが怖いと感じる方の特徴

社交不安障害によって人が怖い、人と話すのが怖いと感じる方の特徴は次のとおりです。

• 人の目が気になる

• 控えめで、自己主張をしない

• 警戒心が強い

• 単独行動を好む

具体的には、以下のような状態があてはまります。

人の目が気になる

他人の視線に敏感になり、誰かに見られているような感覚や、悪口を言われているような感覚がします。そのため、外に出るときや人前に出るときに、大きなストレスを感じるのが特徴。自分の言動や外見に対して、他人からどう見られているかを過度に気にしたり、自分自身を否定的に捉えたりしています。

控えめで、自己主張をしない

控えめで自己主張をしない方は、他人との関係を円滑に保つことや、葛藤や衝突を避けることを重視する傾向があります。とくに社交不安障害を持つ方は、自己肯定感が低く、自己主張をすることに不安や恐怖を感じるため、自身の意見を言うことを回避しがちです。なかには自分の意見や価値を下げ、他人の評価や意見を重視してしまう方もいるでしょう。

警戒心が強い

不安や恐怖に対する感受性が高い性格の方は、警戒心が強まることがあります。また、過去に対人関係でトラウマがあり、必要以上に警戒心が高まっていることもあるでしょう。信頼関係や人間関係に対する懐疑心が強く、防衛反応のひとつとして、他人への警戒心が顕著になることがあります。

単独行動を好む

単独行動を好む方は、集団や社交的な場面に不安を感じる傾向があります。人との関わりやコミュニケーションに不安や緊張を感じることが多く、自分の時間やプライベートな空間を大切にしたいと考えます。一人でいることでリラックスし、ストレスを軽減できると感じるため、単独行動を選ぶことがあるのです。

人が怖い・人と話すのが怖いと感じるときの対処法

人が怖い、人と話すのが怖い、人と会うのが怖い、人と関わるのが怖いと感じるときは、次のような対処法があります。

• 鏡を見ながら自然な表情を作る

• 腹式呼吸でリラックスする

• アロマの香りで緊張を和らげる

• 定期的にカウンセリングを受ける

上記はあくまで簡単な対処法なので、不安や恐怖心が高まって日常生活に支障が出ているときは、医療機関の受診やカウンセリングの利用がおすすめです。

鏡を見ながら自然な表情をつくる

人と話すのが怖いと感じる方は、普段から自然な表情を作る練習をしておきましょう。緊張すると、表情がこわばってしまい、「相手を不快にさせていないか」とさらに不安を感じることもあります。

そのため、毎日鏡の前で、笑顔を作れるように練習するのがおすすめです。自宅の鏡はもちろん、学校や職場にある鏡を利用しても良いでしょう。

腹式呼吸でリラックスする

人と会うのが怖いと感じているときは、身体も緊張しています。意識的に力を抜くことで、精神的にもリラックスできるでしょう。簡単に身体を和らげる方法は、腹式呼吸。まずは背筋を伸ばして、鼻から息を吸い込みます。お腹にしっかり空気を溜めるイメージで吸い込み、緊張を吐き出すように、ゆっくり息を吐きます。このとき、吸うときよりも倍ほどの時間をかけて、息を吐くのがポイント。緊張したときはもちろん、普段からも意識的に腹式呼吸を取り入れておくのもおすすめです。

アロマの香りで緊張を和らげる

アロマオイルの香りは、嗅覚を通じて脳に働きかけ、心や身体のリラックスを促すと考えられています。とくに、ゼラニウムやローズ、ラベンダーなどの香りをかぐと、不安や緊張が和らぎ、リラックスできることがあります。外出時には、アロマオイルをティッシュやハンカチにたらし、香りをかぐ方法がおすすめ。ただし、個人によって効果や好みは異なるため、自分に合った香りや方法を見つけると良いでしょう。

定期的にカウンセリングを受ける

不安と向き合い、日常生活を快適に送るには、カウンセリングを受けることも有効です。カウンセリングでは、自分の思いをしっかり受け止めてもらえ、気持ちの整理ができます。

また、定期的にカウンセリングを受けることで、自分の考えや行動の癖に気づいたり、自分なりの方法を見つけていけたりするようになります。症状や希望に合わせて、カウンセリングを利用する頻度は決めていくことが可能です。

人が怖いと悩んでいる方は、オンラインカウンセリングで相談

これまでの内容を読んで、「もしかしたら社交不安障害かも」と思った方もいるかもしれません。しかし、対処したいと思っても、いきなり専門機関に出向くのは難しいこともあるでしょう。人が怖いと感じるときや外出が難しいときは、オンラインカウンセリングがおすすめです。「こころケア」は、心理的サポートが受けられるオンラインカウンセリング。プロのカウンセラーが相談に乗りますので、気持ちの整理になり、解決策を見つける手助けになります。

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まとめ

本記事では、社交不安障害の特徴や一般的な症状について解説しました。また、効果的な対処法や支援の方法についても紹介しています。薬物療法や認知行動療法、心理カウンセリングなどが有効なアプローチです。社交不安障害を抱える方々は、専門家のサポートを受けながら、自己肯定感の向上や社交的なスキルの習得に取り組むことで、健康的な社会生活を送れるでしょう。周囲の人々も理解と支援を提供することが大切です。