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ノイローゼになる原因とは?代表的な症状や治し方について解説

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ノイローゼと一口にいっても、その種類はさまざまです。原因も家庭や職場、学校での人間関係、病気、身近な人の死など、多岐にわたります。

ここではノイローゼになる原因や症状に加え、発症しやすい人の特徴や治療方法についても解説していきます。最近不安な気持ちによくなるという人は、ぜひ一読してみてください。

ノイローゼ(神経症)とは

ノイローゼとは別名「神経症」のことで、不適応障害を意味します。ノイローゼは日々のストレスなどの精神的・心理的要因で発症するのが特徴。ただ、これらのような要因以外でも発症するケースもあります。

ノイローゼ症状を引き起こす根底には「不安」があり、それが極度に高まってしまうと、精神や身体にさまざまな症状が現れてしまうのです。

ノイローゼとうつ病は違う病気

ノイローゼとうつ病は同じ病気と思われがちですが、実はまったくの別物。前述した通り、ノイローゼは不適応障害を意味しますが、うつ病は長期間継続して起こる精神的な病気をいいます。また、ノイローゼは不安が原因で発症するのに対し、うつ病は発病原因がはっきりとわかっていないという面でも異なるのです。

さらに、ノイローゼとうつ病の特徴にも違いがみられます。ノイローゼは悲壮感を訴えることが多いのですが、ハキハキしていて元気な様子がみられるのが特徴です。また、食欲不振を訴えるケースもありますが、体重の減少は比較的少ないのも特徴のひとつといえるでしょう。

一方、うつ病は顔つきが暗くなり、食欲不振により1ヵ月に5~10kgもの体重が減るケースが多いのが特徴。そして不眠の症状もみられ、寝ようとしても朝まで寝られず早朝に覚醒してしまうことがあります。

それぞれの有効的な治療法も異なり、ノイローゼに対しては主に精神療法、いわゆるカウンセリングが用いられ、うつ病には薬物療法として抗うつ薬が処方されることが多いです。

代表的なノイローゼ(神経症)の症状

ノイローゼ(神経症)には、さまざまな種類や症状が存在します。主な種類は以下の通りです。

  • パニック障害
  • 強迫神経症
  • 抑うつ神経症
  • 恐怖神経症
  • 心気神経症
  • 離人神経症

これらの神経症を発病すると、不安による動機・めまい・イライラ・不眠などの症状がみられ、生活に支障が出てきます。特に大きな不安を抱えやすい受験生や子育て中の方が、発病するケースが多いといわれているのです。

ノイローゼ(神経症)の症状について、詳しく解説していきましょう。

パニック障害

パニック障害は何の前触れもなくいきなり動機やめまい、呼吸困難などの症状が現れ、パニック発作を繰り返し引き起こします。そのため、「またなってしまったらどうしよう」「死ぬかもしれない」と耐え難い恐怖や不安に陥ってしまうのです。

最終的には、外出さえ怖くなってしまい、会社や学校に行けなくなることも。この状態を「広場恐怖」といいます。

強迫神経症

強迫神経症は別名「強迫性障害」とも呼ばれ、強い不安感や不快感(強迫観念)に襲われ、それを解消しようと一定の行為(強迫行為)を繰り返し行う疾患です。例えば、「手が汚れていると思い込んで必要以上に手を洗う」「家の鍵を閉めたかどうか気になって何度も帰宅する」など。これらの強迫観念と強迫行為により、生活に支障が出てしまうのです。

さらにこの疾患の特徴といえるのが、患者自身が自分の行動に対して不合理さを感じていること。「自分は変だ」「周りから変な目で見られる」という恐怖心から、行動範囲が狭くなってしまうケースもあります。

抑うつ神経症

抑うつ神経症は別名「気分変調症」とも呼ばれ、不安や恐怖などの神経質症状に加え、気分が落ち込む・憂鬱などの軽いうつ状態が継続することをいいます。この疾患とうつ病は持続期間で区別されており、2年以上の慢性の軽うつ状態が抑うつ神経症です。

精神的な病気である、うつ病でみられるような妄想などは少ないですが、神経質な面から心理的な葛藤を引き起こしやすい傾向にあります。

恐怖神経症

恐怖性神経症は「恐怖症性障害」ともいわれており、ある特定の物や状況に過度な恐怖を感じる状態のこと。これは一般的に知られている高所恐怖症や、対人恐怖症などとは違います。

特定の物や状況に対する恐怖心があまりにも強く、日常生活に支障をきたしている・本人と周囲の人が大変困っているという場合が、この疾患に当てはまります。

心気神経症

心気神経症とは、自分の身体を過度に心配してしまう状態をいいます。些細な体調の変化にも過敏に反応し、医療機関をいくつも受診するような行動をとるケースも少なくありません。

この疾患を発症する原因は、本人の性格や家庭などの生活環境が大きく影響しているといわれています。転校などによる環境の変化、身近な人の死を経験したことなどが誘因になるケースもあるのです。

離人神経症

離人神経症になると、常に視界にモヤがかかっているように見えたり、耳に入ってくる音も遠くで聞こえているような感じがしたりします。なかには嗅覚や味覚がなくなる人も。このような症状を「離人症状」と呼びます。

原因には、「今の自分は違う自分だ」「今の自分を認めたくない」などの心理が関係していることが考えられます。

ノイローゼ(神経症)になる原因

ノイローゼは環境の変化や大きなストレスなど、心理的要因がきっかけで起こるとされています。ノイローゼになる原因は人によって異なり、職場や学校での人間関係や事故、病気などさまざま。

うつ病とは異なり、ノイローゼは引き起こす原因がはっきりとわかっているため、これらの出来事がなければ発症していないといえます。つまり、この出来事による不安が積もりに積もった結果、ノイローゼになってしまったということなのです。そのため、ノイローゼの原因を取り除くことで、精神的に楽になり症状が改善されるケースもあります。

ノイローゼ(神経症)になりやすい人の特徴

ノイローゼ(神経症)を発症しやすい人にはある特徴があります。主な特徴は以下の通り。

  • 何事にも真面目で完璧主義
  • 心配性でいろいろなことが気になる
  • 内気で引っ込み思案
  • 傷つきやすくナイーブ
  • すぐ感情的になる

このような特徴がある人は、ストレスの影響を大きく受けやすいといえます。またこういったタイプの人は、受け止め方に偏りがあるともいえ、些細な問題でも大きく捉えてしまう傾向にあるのです。詳しくみていきましょう。

何事にも真面目で完璧主義

真面目で完璧主義の人は、環境の変化に適応しづらい傾向にあります。そのため、自分の思うようにいかないと、強いストレスを感じてしまうことに。

たとえば育児では、子どもの世話で家事が思い通りにいかない場面が多々あります。ひとりのときと状況が異なるため、適応しづらくなるのです。

心配性でいろいろなことが気になる
心配性の人は「失敗したらどうしよう」「自分が動いても結果なんて残せない」と悲観的になりがちです。自分に自信が持てないため、行動にうつすことを始めからしない・他の人に決断してもらうというのも特徴にあります。

また、些細なことを気にしてしまうのも特徴のひとつで、自分の考えとのズレに異常に反応してしまうのが原因です。

内気で引っ込み思案

内気で引っ込み思案の人は、自分の弱みを周りに見せるのが苦手で、ひとりで悩みを抱え込みがちです。ノイローゼの発症原因は、自分に起きた出来事を解消できずに不安が募っていくことです。人に相談したり、自分の状況を話したりすることで不安が解消されるきっかけにもなるので、ひとりで悩みを抱え込まないのが大切です。

傷つきやすくナイーブ

傷つきやすくてナイーブな人は不安になりやすく、物事をネガティブに捉える傾向にあります。ポジティブ思考は、「次もあるから大丈夫」「次回はもっと頑張ろう」という考え方なのに対し、ネガティブ思考は「今回もだめだった」というマイナス面ばかり考えてしまうのです。

ネガティブに捉えるのは、決して悪いことばかりではありません。マイナスな面を見つけて改善しようとするのは、自分の成長につながるからです。しかし、過度なネガティブ思考は些細な出来事でも傷ついてしまいます。

すぐ感情的になる

感情的になりやすい人は、相手の気持ちよりも自分の気持ちを理解してほしいという思いが先走ってしまう傾向にあります。それに加え、心に余裕がなく不安感が募りやすいという特徴も。不安になると、自分のことで精一杯になってしまい、冷静に考える余裕を失ってしまいます。

また、感情的になりやすい人ほど自己肯定感が低く、自信がありません。不利な局面に立たされると、感情的になってその場を乗り切ろうとしてしまいがちなのです。

ノイローゼ(神経症)の治し方

ノイローゼ(神経症)の治し方は、以下の通りです。

  • 薬物療法
  • 認知行動療法
  • 自律訓練法
  • カウンセリング

ノイローゼ(神経症)は心理的要因で起こるため、主に精神療法であるカウンセリングが用いられます。ただ、症状によっては薬物療法による治療が効果的なケースもあるので、医師の診断によって治療方法が異なる場合も。詳しく解説していきましょう。

薬物療法

ノイローゼに対する薬物療法には「抗うつ薬」と「抗不安薬」の2種類あり、症状によって処方される薬が異なります。

抗うつ薬は、神経伝達物質であるモノアミンを増やす作用があるため、モノアミンが減少しているうつ病患者に処方するケースがほとんどです。モノアミンを服用すると、この伝達物質の量が調整され、脳内のバランスが整うため、つらい症状が改善されていくといわれています。うつ病以外にも、ノイローゼ(神経症)の症状である、パニック障害や強迫神経症にも適用が可能。

一方、抗不安薬は不安や緊張を和らげ、安心感を得られる薬。パニック障害や強迫神経症、恐怖神経症などの不安を強く感じる症状の際に処方されます。抗不安薬は頓服として使用されることが多く、即効性があるので「この薬があれば大丈夫だ」という安心感を得られる効果も期待できるのです。

認知行動療法

認知行動療法とは、ストレスによって制限されてしまった行動や考え方を、自身の力で良い方向へと導いていけるようになるためのサポートを行う心理療法のこと。この治療法は「行動面」と「認知面」の2つの方向からアプローチを行います。

行動面へのアプローチ方法には「行動活性化」という技法が用いられ、生活習慣を整えたり、達成感を得られる行動を増やしたりして、物事に対する回避を減らしていくのです。

一方、認知面へのアプローチ方法には「認知再構成」という技法が用いられ、物事に対する考え方を見直し、幅を広げることで気分を楽にしていきます。

自律訓練法

自律訓練法とは、自己暗示をかけて筋肉の緊張をほぐす訓練法で、ストレス解消や疲労回復などの効果が期待できます。心療内科で幅広く用いられている治療法のひとつ。とくにノイローゼ(神経症)や心身症、ストレス解消などに効果的だといわれています。

この訓練方法は、静かな場所で楽な姿勢をとりながら、「言語公式」といわれる言葉を頭のなかで反復していきます。リラックス状態のまま目を閉じて、言語公式を順序良く繰り返していくと、自己催眠状態になるのです。

カウンセリング
カウンセリングとは、医師や専門家に心の悩みを相談して、指導を受けながら治療していくことです。指導といっても具体的な指示を出す場合もあれば、話を聞いてまとめるだけの場合もあるので、人によってカウンセリング方法はさまざまといえます。自分の弱みを周りに見せられない、不安な気持ちを抱いていて苦しいという方は、カウンセリングで話をしっかり聞いてもらうことで、問題解決への糸口が見つけられるでしょう。

カウンセリングには、インターネットで行えるオンラインカウンセリングもあります。オンラインカウンセリングのメリットは以下の通りです。

  • 場所や時間の融通が利く
  • 複数人いるカウンセラーを自分で選べる

オンラインカウンセリングなら、「こころケア」がおすすめです。こころケアには、医療機関での臨床経験豊富なカウンセラーが在籍しているので安心です。「対面だと話しづらい…」と感じる人は、ぜひご利用ください。

まとめ

ノイローゼ(神経症)になる原因や、発症しやすい人の特徴などを解説していきました。ノイローゼは誰しもがなり得る疾患です。自分の身に起きた出来事や経験などから引き起こされる不安によって、何の前触れもなく発症します。不安な気持ちや悩みはひとりで抱え込まずに、家族や友人に相談することが大切です。どうしても周りの人には話せない、話したくないという方は、カウンセリングを受けてみるのも良いでしょう。プロのカウンセラーがサポートしてくれるので、不安を軽減し、問題解決の糸口を見つけられるでしょう。

 

記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)