やる気が出ない・体がだるいのは病気のサイン?考えられる原因や対処法を解説
「普段していることなのに急にできなくなった」など、普段から頑張っている人のなかには、ふと無気力になってしまうことや、体がだるい感じがすることは意外にあるものです。真面目な人に多く、怠け者のようなことを思ってしまう自分が嫌になってしまう人も少なくないでしょう。
ここでは無気力や倦怠感に悩む方に向けて、原因、対処法、関連する病気について説明します。
やる気が出ない、休日もずっと寝てしまうのは病気のサイン?
やる気が出ないことや休日にずっと寝てしまうことは、誰にでもあることであり、仕事や家事のやる気がふと出なくなってしまうことは珍しくありません。そんなときには、自分を責めないようにしましょう。
しかし、2週間以上にわたって毎日やる気が出ないという場合は、うつ病のサインかもしれません。無気力が続くということは、心身の健康に何らかの問題があることを示唆しています。食事や睡眠が、倦怠感などの症状を伴っている場合もありますので、そんなときは、診察を受けることを考慮しましょう。
何もやる気が起きない・体がだるいと感じる原因
では、どのようなときに何もやる気が起きない、体がだるいと感じるのでしょうか。原因としては、以下のようなことが考えられます。
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仕事や家事がマンネリ化している
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やりたいこと・やるべきことがわからない
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やらなければならないことが多すぎる
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関心の低いことに取り組もうとしている
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周囲からのプレッシャーが大きい
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栄養不足になっている
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生活リズムが崩れている
目の前のやることに興味を持てないときや、自発的でない動機で物事に取り組むとき、また体調がすぐれないときなどに無気力感や倦怠感を感じることが多いでしょう。
仕事や家事がマンネリ化している
日常の仕事や家事がマンネリ化していると、モチベーションが下がりやすくなります。取り組み始めて間もない頃と違って、慣れてくると達成感を感じづらくなり、仕事や家事が作業のように感じてしまうものです。
同じことの繰り返しで飽きてしまって、やる気が出なくなったり、作業自体を面倒に感じたりすることがあるでしょう。
やりたいこと・やるべきことがわからない
自分が本当にやりたいことややるべきことがわからない場合、やる気がおきないことがあります。目標や意義を見失うとやる意味を見出せず、モチベーションが低下することがあるでしょう。
やらなければならないことが多すぎる
やらなければならないことが多すぎると、漠然としたり、圧倒されたりと、ストレスを感じるものです。やりたいことがあったとしても、どこから手をつけてよいか分からなくなって、やる気が削がれてしまうこともあるでしょう。
家事一つにしても、洗濯、掃除、食事の用意、買い物など、すべきことは多岐にわたります。仕事においても、業務が多くて優先順位をつけられなくなると、面倒に感じることがあるでしょう。
関心の低いことに取り組もうとしている
関心の低いことに取り組むことは、モチベーションの低下につながる可能性があります。
自分の興味や関心の高い活動や目標は、隙間の時間を活用してでも取り組むことができますが、やる意味や魅力を感じられないことについては、やる気が起こらないものでしょう。
周囲からのプレッシャーが大きい
周囲からのプレッシャーが大きい場合、ストレスや不安が増え、やる気が失われることがあります。他人の期待に応えようとするあまり、自分自身を抑えてしまうことも問題です。
やる理由が分かっている作業であっても、「やりなさい!」「これくらいやって当然だ」など高圧的な伝え方をされると、周囲からのプレッシャーを感じて無気力につながる可能性があります。
栄養不足になっている
栄養が足りていない状態では、体がエネルギー不足を起こしやすくなります。食事をとっていても栄養バランスが偏っていたり、不規則な食生活を送っていたりすると、脳が正常に働かず、やる気の低下や体のだるさの原因となることがあります。
とくに、ブドウ糖は脳が働くためのエネルギー源となります。考えがはかどらないときには、ブドウ糖が不足している可能性があるでしょう。
生活リズムが崩れている
不規則な生活リズムや睡眠不足は、やる気や体のエネルギーに影響を与えることがあります。十分な睡眠や規則正しい生活リズムを確保することによって体は疲労から回復しています。
決まった時間に眠れない、自分に合った睡眠時間を確保していない、食事の時間や回数が定まらないなど、不規則な生活によって疲労が取れなくなると、無気力やだるさの原因となるでしょう。
やる気が出ない・体がだるいときに自分でできる対処法
やる気が出ない、体がだるいときの原因はさまざまであり、それぞれ対処法も異なります。自身の原因はどれかを理解したうえで、自分の状態に合う対処法を選びましょう。ここでは無気力や倦怠感の対処法をいくつか紹介します。
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無理をせず何もしない
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やるべきことを書き出す
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小さなことからやり始める
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新しいことを始めてみる
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生活習慣を見直す
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人と会話する
やる気が出ないときやだるいときの対処法は、心身を休めること、できる範囲でやることを整理することなどが挙げられます。
無理をせず何もしない
無理にやる気を出そうとせず、自分を休ませてあげることも大切です。思い切って何もせずに、好きな音楽や映画に触れてリラックスしたり、自分の感情や体の状態を見つめ直したりして少し時間が経てば、またやる気が湧いてくることが多いでしょう。
何もしないことは、知らず知らずに仕事や家事を頑張りすぎてしまう人に良い方法です。会社員の方なら、有給休暇を取得しても良いでしょう。
やるべきことを書き出す
やるべきことや目標をリストアップしてみることで、頭の中が整理された状態になります。タスクが明確になることでやる気が湧きやすくなる可能性があり、優先順位をつけて取り組むことで、達成感を得ることもできるでしょう。
やることが多すぎて漠然としてしまったときは、頭の中にあるタスクを紙に書き出してみて、重要度と緊急度の視点から優先順位を考えてみてはいかがでしょうか。
紙に書き出すことで客観視でき、頭の中だけで考えているときには気づけなかった攻略法を発見することもできます。
小さなことからやり始める
まずは、小さなタスクから始めることを試してみましょう。一つずつ進めていくことで、大きな課題や目標に徐々に近づくことができ、取り組んでいるうちにやる気が戻ってくることがあります。
買い物に行かなければいけないなら、まずは家から出てみる、勉強をしないといけないときは机に座って数分だけ書いてみるでもよいでしょう。これは、心理学では ベビーステップと呼ばれており、何かをすることで脳から作業継続の指示が出ることを作業興奮といいます。
億劫だったことも、始めてみると案外捗ることがありますので、まずは始めてみるのも対処法の一つといえるでしょう。
新しいことを始めてみる
新しい趣味や挑戦を始めることには、やる気を刺激する効果があります。自分の興味や関心がある分野に取り組んだり、新しいスキルを身につけたりすることで未来への想像が広がり、モチベーションが高まることがあります。
新しい挑戦はマンネリを打破するために有効です。また、普段の作業でタイムアタックをしてみたり、いつもと違う方法で取り組んでみたり、日常に少し工夫を入れてみてもよいでしょう。新しい発見ができて、気持ちに変化が起こるかもしれません。
生活習慣を見直す
健康的な生活習慣を整えることも、モチベーションを高めるために大切なことです。私たちの体は、睡眠や食事によって疲労から回復しています。
6~8時間ほどの十分な睡眠時間を確保し、バランスの取れた食事を心がけましょう。栄養豊富な食事をとり、規則正しい食事を心がけることで、体のエネルギーが回復しやすくなります。また、適度な運動やストレッチも取り入れることで、睡眠の質を上げたり健康的な体に近づけたりできます。
寝不足は判断力や思考力などのパフォーマンス低下だけでなく、生活習慣病のリスク増加にもつながるため、注意が必要です。
人と会話する
他人との交流や会話は、心を活発にすることにつながります。友人や家族と過ごす時間を大切にし、気持ちをリフレッシュさせましょう。また、自分の感じていることや悩みを話すことで、心理的なストレスの軽減されることもあります。もやもやと考えていたことが、誰かに話すとスッキリして前向きに考えられることもあるでしょう。
最近では、「こころケア」のようにオンラインで気軽にカウンセリングを受けられるサービスもあります。親しい友達や家族に話すことができれば良いのですが、もし言いにくいことがある場合は、専門のカウンセラーを頼ることも良い方法の一つです。
やる気が出ない・体がだるい状態が続くときに疑うべき病気
やる気が出ないときやだるさが続くときは、休んだり目標を立てたりすることで解消する場合もあります。しかし、なかには以下のような病気が隠れている可能性もゼロではありません。
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うつ病
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抑うつ状態
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自律神経失調症
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無気力症候群
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認知症
ここでは、精神的な病気を中心に説明していきます。
うつ病
うつ病は、心の病気や気分障害の一つであり、気分の低下や無気力感が長期間続く状態を指します。
症状としては、気分の落ち込みや絶望感、無気力感、興味や喜びの喪失、集中力の低下、疲労感、睡眠障害、食欲の変化、自己評価の低下などがみられると、うつ病の可能性が考えられます。
単純な気分の低下とうつ病の違いは、気分が下がった原因が解消された後も続くかどうかが判断基準の一つです。落ち込んでいた理由が解消されたのに気分の低下が続く場合は、うつ病である可能性があるでしょう。
うつ病かもしれないと思ったときは、早めに病院で診てもらうことが大切です。診察や治療は、医師から問診を受けて、自身の状態を把握することから始まります。
無気力症候群
無気力症候群とは、慢性的な無気力や意欲の低下が主な特徴の状態です。強いストレスから自分を守るための逃避行動として、やる気をなくすという症状が現れます。無気力症やアパシーシンドロームと呼ばれることもあります。
周囲の物事への興味がなくなる、やる気や集中力の低下、感情の起伏が小さくなるなどがみられると、無気力症候群の可能性が高まります。
無気力症候群は、放置しておくとうつ病につながる可能性もあるため、早めに精神科の診察やオンラインカウンセリングなどを利用しましょう。決定的な治療は2023年6月現在なく、生活習慣の改善や精神療法などが行われます。
慢性疲労症候群
慢性疲労症候群とは、半年以上の長期にわたって疲労感や倦怠感が現れる疾患です。症状としては、発熱や咽頭痛、頭痛、筋肉痛、関節痛、脱力感、睡眠障害、思考力の低下、抑うつや不安などがみられると、慢性疲労症候群の可能性があります。
2023年6月現在では決定的な治療法はなく、自身で良い睡眠や食事などを心がけて休養を取ることや、医療機関の診察を受けることが大切です。治療では、抗酸化療法や精神療法、運動療法などが行われるでしょう。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが乱れることで身体に現れるさまざまな不調の総称です。倦怠感、不眠、疲れがとれない、頭痛、動悸、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢や便秘、冷え、不安定、イライラや不安、鬱、などの症状が見られると、自律神経失調症の可能性が考えられます。
対処法としては、生活習慣の改善やストレスケアが大切になります。ただし、自宅のケアだけで治るとは限らないため、医療機関で診察を受けることも検討しましょう。
診療科は、イライラやうつなどの精神症状が強いなら精神科、下痢や便秘が強いなら消化器内科といった具合に、一番つらい症状に合わせて選びましょう。
認知症
認知症とは、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、記憶力、思考力、判断力などの認知機能が障害される病気です。発症する要因の違いによって、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型に分類されます。
症状は、記憶力の低下、物忘れが増える、日常生活上の実行力の低下、失語、物事の順序や時間の把握が難しくなる、また、人によっては抑うつや興奮、徘徊、不眠、幻覚なども現れることがあります。
認知症かもしれないと思ったときは、早期の診断と専門家への相談が重要です。早期に対応することで治療可能な認知症であれば対応でき、アルツハイマー型であれば進行を遅らせることが可能です。
やる気が出ない・体がだるい状態が続いたら専門機関に相談を
やる気が出ない状態や倦怠感が続いているときには、専門機関に相談しましょう。放置しておくことで他の病気につながったり、早期の対応によって治療期間が短くなったり、認知症であれば種類によって対応できることがあります。
基本的には精神科や心療内科の受診、自律神経失調症なら最もつらい症状に合う診療科を選びましょう。有資格者が在籍するカウンセリングサービスの利用なども有効です。
オンラインカウンセリングなら気軽に相談できる
精神科などに通うのは少し気が引けるという方は、気軽に相談できる方法としてオンラインカウンセリングの利用もおすすめです。オンラインカウンセリングは、スマホとインターネット環境があり、プライバシーが守られ安心して話せる場所であれば、どこからでも利用できることがメリットです。
「こころケア」では、医療機関での臨床経験があるカウンセラーや、複数のカウンセラーから相談相手を選ぶことができます。
まとめ
やる気が出ないときや倦怠感が続くときの原因として考えられることや対処法、関係しているかもしれない病気について説明しました。無気力や倦怠感の原因には、疲れていることや、やることが多すぎること、目の前の作業に飽きていたり関心が持てなかったりすることも挙げられるでしょう。
そのため、基本的な対処法は心身を休めることや、作業の整理、できる範囲で新しいことや工夫を始めてみることが挙げられます。
セルフケアで改善することもありますが、病気と関連していることもあります。長い間治らないなど違和感を覚えたときは、精神科などで診察を受けましょう。
医療機関に行くのは気が引ける場合、まずは気軽に相談しやすいオンラインカウンセリングを頼ってみてはいかがでしょうか。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平
国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)