コラム

情緒不安定とはどのような状態?不安定な精神状態を落ち着かせる方法も紹介

メンタルヘルス

「情緒不安定」は、心や感情が不安定な状態を指す言葉です。誰しも落ち込むことや悲しくなるといった気持ちの変化を経験することはあるでしょう。しかし、理由もなく悲しくなったりイライラしたりする場合は、精神疾患が原因で症状が現れている可能性もあります。

この記事では、情緒不安定な方に見られる症状や原因について解説していきます。情緒不安定な症状が出たときの対処法も紹介するので、参考にしてみてください。

情緒不安定な精神状態とは

情緒不安定とは、心が不安定になり感情の変化が激しい精神状態のことです。

情緒不安定になると一瞬で機嫌が変わることがあり、「急に怒る」「イライラする」といった攻撃的な感情が出たかと思えば、「急に泣く」「落ち込む」といった悲観的な感情が出るなど、感情のコントロールがうまくできなくなります。

感情の起伏は誰にでも存在するものですが、情緒不安定は精神疾患の症状の一つである可能性もあるので、「不安定な状態が続く」「仕事や生活に影響が出る」といった場合は注意が必要です。

情緒不安定な方に見られる症状

情緒不安定な方の症状として、以下があります。

  • 気分の浮き沈みが激しい

  • 理由もなく急に泣く

  • イライラして怒りっぽくなる

以下では、それぞれ詳しく解説をしていきます。

気分の浮き沈みが激しい

情緒不安定な方は、急に不安に襲われたり急に悲しい気持ちになったりしたかと思うと、いきなり明るくなったりもします。

感情をコントロールできずにネガティブな感情に振り回されるため、これまで気にならなかった出来事でも、情緒不安定になると「自分はダメな人間」と悲観的に捉えることが多くなるのです。

理由もなく急に泣く

仕事や家事をしている時に、とくに理由もなく急に悲しくなって涙が止まらなくなるのも情緒不安定の症状です。

いつもより物事を悲観的に感じてしまい、ちょっとしたことで「もうダメ」と否定的な気持ちになってしまいます。

涙は人にとって生理現象ですが、理由もないのに涙が出る場合は、自身の自覚がなくても日常のどこかでコントロールできないストレスや不安を抱えているのかもしれません。

イライラして怒りっぽくなる

情緒不安定は、イライラして怒りっぽくなるという症状もあります。

普段は気にならない場面や出来事でもイライラしてしまう、些細なことにも怒ってしまう、その怒りを誰かにぶつけてしまうなど、攻撃的になってしまうのです。

しかし、攻撃的な感情を誰かにぶつけその気持ちを抑え込めたとしても、すっきりすることはなく、よりストレスを抱えてしまう場合が多いでしょう。

その他の症状

情緒不安定の症状は、上記で挙げたもの以外にもいくつかあるので紹介します。

  • 眠れない

  • 仕事に集中できない

  • 気力がわかない

  • 食欲が増加した

  • 食欲が減少した

これらの症状は、睡眠不足になったり風邪を引いたりした時にも似たような症状が出ます。

しかし、一時的なものでなく、長期間続くようであれば「情緒不安定な状態なのかも」と一度考えてみることも大切です。

情緒不安定な状態に陥る原因

情緒不安定な状態に陥る原因には、主に精神的な要因と身体的な要因の2つがあります。

  • 精神的な要因

  • 身体的な要因

さまざまな要因が情緒不安定の要因として考えられます。基本的には、ストレスなどが関係する精神的なものと、痛みなどが原因となる身体的なものがあります。

それぞれについて詳しく解説していきます。

精神的な要因

精神的な要因には、ほとんどの場合「ストレス」や「不安」が大きく関係しています。

人間関係や仕事、環境の変化といった、日常生活の中で受けるさまざまなストレスや不安を溜めすぎると、自律神経のバランスが崩れ情緒不安定な状態に陥ります。

なお、うつ病などの精神疾患の症状としても、情緒不安定の症状が現れる場合があるため注意が必要です。

身体的な要因

身体的な疾患による痛みや不安による睡眠不足も、情緒不安定の原因の一つです。

女性の場合は、排卵や月経、妊娠などホルモンバランスの変化で精神的・身体的な不調をきたすケースもあり、症状が月経前の3~10日の間で繰り返し現れる時は、月経前症候群(PMS)と診断されることがあります。

また、とくに精神的な症状が強い場合は月経前不快気分障害(PMDD)の可能性も考えられます。

なお、日常生活において睡眠不足やアルコール摂取なども自律神経が乱れやすくなり、情緒不安定の状態になりやすいため注意が必要です。

情緒不安定は病気?考えられる精神疾患

情緒不安定な症状が続く場合は、以下のような精神疾患が原因であることがあります。

  • うつ病

  • 双極性障害(I・II型)

  • 不安障害

  • 自律神経失調症

  • 更年期障害

「情緒不安定」自体は、病気ではありません。強いストレスや不安を抱えたときに多くの人に現れる自然な状態といえます。

しかし、情緒不安定な状態が長引いてしまうと精神疾患になったり、逆に精神疾患が原因で情緒不安定の症状を引き起こしたりするケースもあるでしょう。

以下ではそれぞれ精神疾患の特徴について解説していきます。

うつ病

うつ病は、「ひどく気分が落ち込む」、「食欲・睡眠欲・性欲など意欲の低下」といった状態が続き、仕事や日常生活に支障をきたす病気です。

症状は人によりさまざまですが、1日中落ち込んでいる・何に対しても興味を持てない・眠れないといった症状が2週間以上続く時は、うつ病の可能性があります。

双極性障害(I・II型)

双極性障害は、気分が落ち込む「うつ状態」と、気分が高揚する「躁状態」が繰り返し現れる疾患です。

双極性障害の症状はいつも現れるわけではなく、うつ状態でも躁状態でもない、普通の状態もあるのが特徴です。

双極性障害は躁状態の程度により2つに分類され、躁状態が激しい場合はⅠ型、比較的穏やかであればⅡ型と分類されます。

不安障害

不安障害は、不安や心配が原因で起こる疾患の総称です。

緊張したときに汗をかくことや心臓がドキドキするのは、ごく当たり前の反応ですが、不安や心配が過度になり日常生活にまで影響が出てしまう場合は、不安障害の可能性があります。

一口に不安障害といってもさまざまな病気があり、パニック障害や社会不安障害、強迫性障害などがあります。

自律神経失調症

自律神経失調症は、ストレスで自律神経が正常に機能しないことにより発生するさまざまな症状の総称です。

自律神経は身体のあらゆる器官の働きに関わるため、腹痛・下痢・動悸・吐き気・不安感・疲れやすい・情緒不安定など症状は多岐にわたります。

更年期障害

更年期障害は、性ホルモンが急激に減ることにより精神やや身体にさまざまな不調をきたす状態です。

女性は閉経を迎える前後の約10年間で発症し、のぼせ・発汗・動悸・イライラといった自律神経失調症と同じような症状が現れます。

更年期障害は、女性だけでなく男性も40代後半頃に症状が現れることがありますが、女性と違いホルモンの分泌量の変化が緩やかな男性は、老化現象の一つとされることが多く気付かれにくいのが特徴です。

また、更年期障害の原因は、性ホルモンの低下だけでなく、性格的なものや心的ストレスが影響しているといわれています。

不安定な精神状態を落ち着かせる方法

ここでは、不安定な精神状態を落ち着かせる方法について解説していきます。以下は、イライラするといった精神状態を落ちつかせる方法になります。

  • 呼吸をする

  • 睡眠時間を十分にとる

  • 身体の緊張をゆるめる

  • 不安な気持ちをノートに書き出す

  • 好みの香りを嗅ぐ

不安定な精神状態を落ち着かせる方法には、「深呼吸をする」「睡眠時間を十分にとる」などが挙げられます。ご自身で、手軽に取り入れられる方法ばかりのため、参考にしてみるのも良いでしょう。

深呼吸をする

不安定な精神状態を落ち着かせる方法で最も手軽にできるのが深呼吸です。

深呼吸にはリラックス効果があるといわれています。呼吸は感情が高まると浅く荒いものになり、リラックスすると深くゆっくりとしたものになります。

そのため、気分を落ちつかせたいときには、ゆっくり深呼吸を行いましょう。リラックス状態で働く副交感神経が刺激されるため、気持ちを落ちつかせることができます。

睡眠時間を十分にとる

「つい寝る前に動画を見て夜更かししてしまう」、「仕事が忙しい」などの理由から、睡眠不足が続くとイライラしやすくなり感情のコントロールをしにくくなります。

また、慢性的な睡眠不足に陥った場合、生体リズムが崩れるため自律神経のバランスが乱れます。そのため、自律神経のバランスを整えるには、睡眠を優先することが重要なのです。

睡眠で大切なことは、十分な睡眠時間を確保すること。成人の場合、個人差はありますが6~7時間前後の睡眠時間が必要です。

日中眠くなってしまう人や、休みの日に早く起きることができず遅くまで寝てしまう人は、睡眠時間が足りていないサインといえます。

身体の緊張をゆるめる

基本的に私たち人間の身体は常に力が入った状態であり、そこにイライラや不安などが加わることで、さらに身体は緊張して固くなります。

そのような状態の時に、「落ち着こう」と無理やり心に言い聞かせたとしても、リラックスするどころか逆効果になる場合があります。

そのため、一旦身体をリラックスさせた後に心のリラックスへと繋げる必要があります。時間をかけず手軽にリラックスできるのが筋弛緩法という方法です。

身体(筋肉)を緊張させた後、力を抜いてリラックスさせる方法です。手順は、以下になります。

  1. 両腕を体側につける

  2. 両肩に力を入れて上げる(15秒キープ)

  3. 一気に力を抜いて肩を下ろす

不安な気持ちをノートに書き出す

自分の不安な気持ちをノートに書き出すこともおすすめの方法です。不安な気持ちや感じたストレスを書き出すだけで、心が落ちついていきます。

具体的には、「ストレスを感じたことについて書く」「思いつくままグチを書く」「なぜそのような気持ちになったのか書く」「今後の対策などを書く」という手順で、書いていきましょう。

書き出すことにより、頭の中でモヤモヤしていた怒りや不安を整理することができ、客観的に見られるようになります。

好みの香りを嗅ぐ

自分が心地よく感じる香りを嗅ぐのも、不安な精神状態を落ち着かせるのにおすすめの方法です。

好みの香りを嗅ぐことが、前向きな感情を誘発してリラックス効果を高めます。また、視覚や味覚といった五感の中でも、嗅覚が感じる刺激は脳に伝わる刺激が一番早いといわれているのです。

自律神経を司る脳の部分に香りが伝わると、自律神経に働きかけて望ましい作用を与えることが分かっています。

たとえば、ラベンダーやベルガモットの香りは自律神経を整える効果が期待でき、ローズマリーの香りは気力を高める効果が望めます。

情緒不安定の治し方は?

情緒不安定の治し方には、以下のようなものが挙げられます。

  • 認知行動療法(CBT)

  • マインドフルネス

  • カウンセリング

疾患ではない情緒不安定は治療法に特に決まりがありません。ただし、情緒不安定の症状が病気に関わっている可能性が高い場合、精神科や心療内科を受診して原因となっている病気が何かを診断します。そのうえで、適した治療を開始する必要があるでしょう。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法はCBTとも呼ばれる心理療法で、ストレスなどにより狭くなった考えや行動に対して、自分の力で柔軟な考え方や行動ができるようにサポートします。

もともとは、うつ病に対する精神療法として考えられたものですが、うつ病だけでなく強迫症や不安症など、さまざまな精神疾患に治療効果、そして再発予防効果があるとされています。

マインドフルネス

マインドフルネスは、仏教の瞑想法を基に生み出されたメンタルケアです。

瞑想や呼吸法、さまざまなエクササイズなどを行い、心を落ち着かせることでストレスの軽減だけでなく、集中力のアップなどの効果が期待できます。

過去の失敗に悩んだり未来を心配したりすることは、ますます自律神経失調症の症状を悪化させることにつながります。マインドフルネスは、過去や未来のことで悩むのではなく、「今」に集中し意識を戻していく治療なのです。

カウンセリング

自分自身に情緒不安定の症状が出ていたとしても、「いきなり病院への受診はハードルが高い」と感じる方もいるでしょう。そのような場合、まずはカウンセリングを受けるのも有効です。

情緒不安定の症状が出る原因について、カウンセラーと一緒に見つめ直すことで、自分に合った対処法を考えることができます。

対面のカウンセリングも少し不安だという方には、オンラインカウンセリングがおすすめです。

【オンラインカウンセリングのメリット】

  • 病院受診に抵抗がある方も利用しやすい

  • 住んでいる場所や時間に関係なく相談できる

  • 対面が苦手な方でも利用しやすい

パソコンやスマートフォンなどを利用して行えるオンラインカウンセリングは、対面のカウンセリングと違い場所に制限されることがありません。

オンラインの場合、直接会うことなくカウンセリングが受けられるので、人と直接話すことや顔を見せることに抵抗のある人にとっても利用しやすい点がメリットです。

情緒不安定な症状の相談をしたいけれど、直接会うのは不安という方は、一度オンラインカウンセリングの利用を検討してみるのもおすすめです。

まとめ

気持ちが落ち着かなかったり、不安になったりすることは誰にでもあります。そのため、情緒不安定な症状が現れたとしても、すぐに精神疾患に直結するとは限りません。

しかし、長期間にわたり気持ちの浮き沈みが大きい場合や、仕事や日常生活にまで影響を及ぼす場合は、精神疾患の可能性もあるため病院の受診を検討してみると良いでしょう。病院への受診が不安な方は、オンラインカウンセリングなどの活用もおすすめです。症状がつらい時には1人で悩まず、まずは誰かに相談することを考えてみましょう。

 

記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)