摂食障害とは?種類ごとの症状や原因、治し方について解説
摂食障害は食行動に問題が現れる疾患で、日常生活に支障が出ている方が多くいます。適切な治療を受けることが重要です。
今回は摂食障害の症状と、治療法について詳しく解説します。自分の食行動を見直したい方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
摂食障害とは
摂食障害とは、食行動に対してさまざまな問題が現れる疾患のこと。治療方法は症状によって違いますが、おもに栄養療法やカウンセリング、認知行動療法です。
10~19歳に多く、女性が90%といわれており、ダイエットや食欲不振をきっかけに発症し、社会的・心理的ストレスを感じている方が多くいます。
摂食障害は、以下の4つの種類に分けられます。
神経性やせ症 | 神経性過食症 | 過食性障害 | 回避制限性食物摂取症 | |
特徴 | 体型や体重への執着がある | 体型や体重への執着はない | ||
感じ方 | 痩せていても太いと感じる | 過食が苦痛、食べることに罪悪感がある | ||
食事の量 | 制限する人が多い | コントロールができずに過食する | 食事量が減少する | |
行動 | 過度に運動する | ・吐く ・下剤を使う |
・吐かない ・下剤を使わない |
過剰な運動、嘔吐、下剤の使用はない |
体型の変化 | 明らかな低体重 | 正常から過体重 | 低体重から正常 |
4つの症状は特徴や行動パターンが異なるため、理解するためにしっかりと確認しましょう。具体的に説明します。
神経性やせ症の症状
神経性やせ症は、体重増加を恐れることが特徴。自分の体型に関する認知が歪んでしまい、やせているにもかかわらず太っていると感じることがあります。
摂食制限型(ダイエット・断食等)と過食・排出型(嘔吐・下剤乱用等)の2種類に分類され、医療機関で適切な治療が必要です。原因としては、以下のものが挙げられます。
- 家族や友人から太ったことを指摘された経験
- 対人関係の悩み
- 「やせている人」がもてはやされる社会的要因
このようなさまざまな要因が絡み合い、発症するといわれています。神経性やせ症の症状は、身体と心理的症状がみられ、具体的な症状は以下のとおりです。
【神経性やせ症の主な症状】
身体症状 | 心理的症状 |
---|---|
|
|
また神経性やせ症は自殺の危険性が高く、年間10万人あたり12人が神経性やせ症と報告されています。気になる症状がある場合は、すぐに医療機関への受診を検討しましょう。
神経性過食症の症状
神経性過食症とは、食事の調整が自分でできなくなり、頻繁に過食してしまう疾患のこと。大量の食べ物を、詰め込むように一気に食べるのが特徴で、「むちゃ食い」と呼ばれます。
自分でコントロールできない感覚が強い場合が多く、米国精神医学会の診断基準では、週1回でも過食があれば治療が必要とされています。見られる症状や行動は、以下のとおり。
【神経性過食症の主な症状】
- やせたいと強く願っているのに衝動的な過食が止められない
- 過食が始まると食べる量や内容がコントロールできない
- 過食嘔吐や下剤乱用が日常化している
- 太っている自分には価値がないと思う
過食性障害の症状
過食性障害の症状のひとつとして、むちゃ食いを繰り返すことがあります。神経性過食症との違いは、嘔吐、下剤使用などの不適切な代償行動を伴わないことです。したがって体重が増える傾向にあり肥満が多くみられます。
過食性障害で見られる症状と行動は、以下のとおりです。
【過食性障害の主な症状】
- 食べ物のことばかり考えてしまう
- 異常に食べ過ぎているのではと悩んでいる
- 食事時間や空腹とは無関係に多く食べてしまう
- 食べ方がコントロールできない
- 食べる量が異常だと悩み人から隠れて食べる
重症になると日常から過食傾向になり、人前では我慢するもののトイレに駆け込んで過食に走ることも起こります。食べ過ぎてしまうこと以外に、眠れなかったり気分の落ち込みが激しかったりする場合は、医療機関へ相談してみてください。
回避制限性食物摂取症の症状
回避制限性食物摂取症は、食に関心がなく、意図せず痩せてしまったり、体調が悪くなってしまうほど栄養を摂取できなかったりする症状があります。
また毎日決まったものしか食べなかったり、食事の量をごく少量にしたりする傾向があります。症状の具体例は、以下のとおり。
【回避制限性食物摂取症の主な症状】
- 体調不良ではないのに食事を拒否する
- 極端な偏食で、特定のものしか食べない
- 食べ物の外見や食感などへの感受性が強い
- 食事中にイライラしてしまう
ただし食べ物が手に入らない環境や、宗教上の関係で忌避がある場合は、症状に当てはまりません。
摂食障害の原因
摂食障害の原因は、心理的な要因と社会的価値観の両側面があります。それぞれの要因について見ていきましょう
【摂食障害の要因】
- 心理的な要因
- 社会的価値観
心理的な要因
摂食障害の原因として、心理的な要因があります。太りたくないといった体重への執着や、太っていると価値がないなどの思い込みが挙げられます。また、以下のようなことも要因です。
- 自己評価が低く、理想が高い
- 本当の自分を見せたら相手に見捨てられる
- 抑うつ、怒り、不安がたまっている
- 完璧主義な性格である
- 誰かに認められたいという気持ちが強い
- 周りの目が気になって、思うように行動できない
- 自分で判断することが苦手
自分の性格や考え方も摂食障害に大きく影響します。また家庭環境の問題や対人関係のトラブルで、発症するケースも。
社会的価値観
細いモデルが起用されるなど、痩せていることが美しいという社会的な価値観が背景にあります。こうした背景の元、ストレス解消で食べることをやめ、また恋人との別れなどが引き金になって、摂食障害を発症してしまうのです。
その他、スポーツ選手や芸能人などに対しての指導の問題、一般的な日本の価値観としての痩せの文化が挙げられます。
摂食障害の治し方
摂食障害の治療方法は、薬物商法と心理療法を組み合わせることが重要。治療方法は、以下のとおりです。
【摂食障害の治し方】
- 薬物療法
- 家族療法
- 認知行動療法
薬物療法
薬物療法では、抗うつ剤など一人ひとりに合った薬を処方することで、心因性の症状を緩和し、身体的な苦痛を和らげます。また神経性過食症の場合は、抗うつ薬や精神安定剤を処方することもあります。
最近では、過食と嘔吐の悪循環を断ち切るために、ビタミン剤なども出されるケースも。多くの場合、薬物療法のみでの改善は難しく、カウンセリングなどの心理療法と並行して治療が必要です。
家族療法
家族療法とは医者やカウンセラーが、摂食障害を家族の問題と捉え、解決に向けて家族全体をサポートしながら克服を目指す治療法のこと。家族との関わりの中に原因がないかを探り、それを解決することから始めます。家族はどのようなサポートをすればいいかといったところにも、目を向けていくことが特徴。
親の過干渉や過保護、両親の不仲、身体的な特徴について日常的にからかわれるなど、蓄積したストレスが原因となります。家族で性格をよく理解していると思っていても、本人に心理的ストレスを与えていることはないかを、家族でもう一度見直してみるとよいでしょう。
認知行動療法
認知行動療法とは、体重やスタイルについて凝り固まってしまった考え方を緩和して、「やめたい」と思っている行動を改善できるようにサポートする治療法のこと。精神療法や心理療法の一種で、医師やカウンセラーとの対話を通して改善を目指します。
神経性過食症に対する治療としての認知行動療法は、さまざまな研究で効果があることがわかっています。認知行動療法を行っている医療機関を見つけるのは難しいですが、オンラインカウンセリングであれば、プライバシーが守られ安心して話せる場所であれば、どこからでも受けることが可能。
「こころケア」では、ご自身の好きな場所から自分の考えを整理できる環境が整っています。体型についての考え方を変えてみたい方は、オンラインカウンセリングの利用を検討してみてください。
認知行動療法については、以下の記事もご覧ください。
関連記事:認知行動療法とは?具体的なやり方や受ける前に知っておきたいことを解説
摂食障害に関するよくある質問
摂食障害は4つの症状があり、心理的要因と社会的価値観が大きく影響していることがわかりました。こちらでは摂食障害に関するよくある質問を紹介します。
摂食障害は女性しか発症しない?
摂食障害は、思春期の女性に多い病気です。しかし男性や高齢者にも起こり、中高年になって再発するケースもあります。また性別関係なく、真面目で、完璧主義の人が発症しやすいとされています。
摂食障害の受診先がわかりません
摂食障害を治療するためには、適切な治療を受けることが重要です。受診や相談できる場所は、以下のとおりです。
- かかりつけの医師
- 精神科や心療内科
- 自助グループ(日本摂食障害ネットワーク)
- 家族会
- 各都道府県の精神保健福祉センター
- 保健教諭・スクールカウンセラー
摂食障害相談施設リストには、自治体ごとの受診可能先を掲載しているため、参考にしてみてください。オンラインカウンセリングであれば住んでいる場所に関係なく、気軽な相談が可能です。
まとめ
摂食障害は、医療機関などできちんと治療することで改善できます。医療機関に行くことに抵抗がある方は、最初の相談先としてカウンセリングを受けてみてください。カウンセリングなら「こころケア」がおすすめです。
「こころケア」はオンラインでカウンセリングを行っており、スマホとインターネット環境があり、プライバシーが守られ安心して話せる場所であれば、どこからでもカウンセリングを受けられます。しかし摂食障害の場合は、受診が必要なケースが多くあるため、症状が少しでも当てはまると感じたら、受診を検討しましょう。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平
国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)