承認欲求とは?強い人の特徴や原因、過度な欲求の緩和方法を解説
自分の性格や言動について考えたとき、「承認欲求が強いのかな」と悩む人もいるのではないでしょうか。承認欲求は「他者承認」と「自己承認」に分けられ、それらが強すぎることでリスクとなることもあります。
そこで今回は、承認欲求の原因となることや対処法についてご紹介します。自分の承認欲求に関して悩みを抱えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
承認欲求とは
承認欲求とは、「他の人から認められたい、自分自身が価値のある存在だと認めたい」などの願望のことを指します。承認欲求は、「マズローの欲求5段階説」でも有名です。「マズローの欲求5段階説」とは、人間の欲求を5段階のピラミッドのような形で表したもので、ピラミッドの下から順番に、「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己表現の欲求」に分けられています。
一番低階層の生理的欲求は、生きていく上での基本的・本能的な欲求です。たとえば、食事をする、眠る、排泄などを指します。
二段目の安全の欲求では、危険を回避し、安全な環境で安心して暮らしていきたいという欲求です。心と身体の両方が健康であり、かつ経済的な面でも安定した生活を送りたいなどの意味合いがあります。
三段目の社会的欲求は、仲間を求めたり、集団に所属したりする欲求です。社会的欲求を満たされていない状態では、社会的不安や孤独感を感じやすくなります。
承認欲求は下から四段目に位置する、所属する集団の中で周りから高い評価を得たい、自分の個性を見出したい、尊重されたいなどの欲求です。承認欲求は、自身を成長させることができる原動力とも呼ばれています。
最後の自己実現の欲求は、ピラミッドの一番上に該当します。自らの可能性や使命を達成することを目指す欲求です。他に挙げた欲求と比べ、広い視点をもって人生に向き合うことができます。
承認欲求には2種類あるため、以降で詳しく見ていきましょう。
他者承認
他者承認とは、自分以外の他者からの称賛や社会的地位を得ることで満たされる欲求です。簡単に言うと、他者から認められたいと思う欲求です。
具体的な例としては、会社の上司や同僚から「あの人は仕事ができると思われたい!」といった欲求が挙げられます。他者承認は5段階説のなかでも低次の承認欲求とされるため、他者承認に依存しすぎるのは危険であるといわれています。
他者承認は、他者の感じ方次第で評価が変わるため、「自分は仕事を頑張ったが思ったほどの評価を周りから得られなかった」ということも考えられるでしょう。自分自身の価値を他者からの評価に依存してしまうことで、自分の感情を押し殺し、自分を犠牲にする可能性もあるので、他者承認に依存しすぎるのには注意が必要です。
自己承認
自己承認とは、自身の能力を高めたり、技術を磨いたりするなどして、自分に対する信頼を高めることで満たされる欲求を指します。具体的には、「自分ならもっとうまくできるのになぜできないのだろう」「もっと自分を好きになりたい!」などです。また、このような考えをしているときには、自己承認を求めている状況であるともいえます。
自己承認では他者は関係なく、自身の存在価値を自分の基準で決めることができます。そのため、他者承認とは異なり、依存するリスクがなく、承認欲求を満たせるでしょう。
一方で、理想を高く持ちすぎるがゆえに現状の自分になかなか満足できないなどの状況が発生することもあります。その結果、モチベーションのダウンや自身の過小評価につながることも考えられるので、理想は少しずつ上げていくのがおすすめです。
承認欲求が強すぎることのリスク
承認欲求は、誰しもが持っている欲求です。しかし、強くなりすぎることで以下のようなリスクが発生します。
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自己肯定感やモチベーションが下がりやすい
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人間関係が悪化し、トラブルに発展する可能性がある
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他者に認められることが目的化してしまう
強すぎる承認欲求は、仕事だけでなく日常生活にも支障きたす恐れがあります。詳しく見ていきましょう。
自己肯定感やモチベーションが下がりやすい
承認欲求を強く求める人は、承認される機会が少なくなることで自身のモチベーションが下がり、自己肯定感が低下する特徴があります。「自分は頑張っているのに誰にも認めてもらえない」「自分は会社にとって必要ない、力になれない」と自分を否定し、自己肯定感を下げてしまいます。
また、認めてもらえない現状に失望し、働くことに対してのモチベーション低下につながることもあるでしょう。普段モチベーションが高い人が何かをきっかけにモチベーションを低下させると、会社に与える影響も大きくなります。
人間関係が悪化し、トラブルに発展する可能性がある
承認欲求が強くなると、必要以上なアピールをする、自慢話や見栄を張るなどの行動が多くなる傾向があります。その結果、周囲の人は「この人とは付き合いづらい」と感じてしまい、人間関係が悪化してしまうことがあります。
ただし、欲求が強すぎる場合には、「境界性パーソナリティ障害」という疾患が関係しているケースもあります。このような場合、自分を制御することが難しくなり、仕事や日常生活に支障が出る恐れがあるので、一度精神科などで受診してみましょう。
他者に認められることが目的化してしまう
承認欲求が高すぎると、他者から認められること、承認されることが目的化してしまうことがあります。結果にこだわり過ぎて何をするときも楽しむことできなくなります。
また、仕事は、承認欲求を高めるためにするものではありません。「他者から認められる」ということが目的化しないように意識するのがポイントといえるでしょう。
承認欲求が強くなってしまう原因
承認欲求が強くなる原因としては、以下4つのことが挙げられます。
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自分を認められない
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愛情不足の環境で育った
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他者から認められた経験が少ない
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認められる快感におぼれる
人は自分を好きでいたい、自分を認めたいという「自己承認欲求」を持っていますが、自分を認められないと、自分を受け入れられずに「他者承認欲求」へとつながり、他者からの評価を得たいと思うようになります。
また、愛情不足の環境で育った場合、大人になったときに自分に自信を持てず、他人からの承認を強く求める傾向にあります。
他者から認められた経験が極端に少ない人は、認められた経験がある人と比べ、欲求不満な状態になりやすいでしょう。そのため、「認めてほしい」という気持ちが強く現れがちです。
ほかにも、承認欲求が満たされるにつれて強い快感を覚える人は、認められる快感におぼれ、「この快感をもう一度」「もっと刺激を感じたい」などと承認欲求が強くなり、徐々にエスカレートしていく傾向にあります。
承認欲求が強い人の特徴|男女別に紹介
承認欲求の強い人の特徴は、男女によって以下のような違いがあります。
承認欲求が強い女性の特徴
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人目を気にする
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SNS投稿が多い
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嫉妬心が強い、劣等感を感じやすい
承認欲求が強い男性の特徴
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目立ちたがり屋
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ステータスを気にする
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家族や友人を大切にする
女性と男性に分けてより詳しく解説していきます。
承認欲求が強い女性の特徴
承認欲求が強い女性は、「人目を気にする」「SNS投稿が多い」「嫉妬心が強く、劣等感を覚えやすい」などの特徴があります。まず、他者からの反応が気になり、自分が承認されているかを常に確かめようとします。また、誰かにかまってほしく、暇さえあればSNSの投稿をしていといった傾向も。他者からのリプライや「いいね」などの反応で、承認欲求が満たされるのです。
承認欲求が強ければ強いほど、優越感を他者に奪われることに神経質になります。そのため、自分の承認欲求を満たすチャンスを奪う相手が現れると、その相手に対して強い敵対心を抱きます。自分より上に立ち、目立つ人に対しては、嫉妬心や劣等感を持つ傾向があるでしょう。
承認欲求が強い男性の特徴
承認欲求の強い男性の多くは、「目立ちたい」と考えます。自己主張が強めで、SNSの投稿も多くなります。また、ステータス(社会的地位)を気にする傾向もあるでしょう。自分の学歴や肩書をはじめ、仕事の達成率を気にします。その結果、周りの人よりも自分のほうが良いステータスを持っていることを見せつけ、自慢することが多くなるのです。
なかには、自分を大切にしてほしい、大切に扱ってほしいという思いから、家族や友人を大切にする男性もいます。本人は本当に大切に思っているのかもしれませんが、周りにアピールする行動は、承認欲求の現れだといえるでしょう。
自分の承認欲求をなくす方法
承認欲求をなくす方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
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承認欲求は消えないものだと理解する
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ありのままの自分を受け入れる
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すべての人に好かれようとしない
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自分の価値観を広げる
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SNSから離れてみる
以上の5点が考えられます。さっそく見ていきましょう。
承認欲求は消えないものだと理解する
承認欲求は、生きていくうえで欠かせないものです。もし自分には必要ないと思っている場合でも、完全に消すことは難しいでしょう。そのため、承認欲求は消えないものと理解し、自分をコントロールしながら満たしていくのがおすすめです。
相手の反応が気になることもありますが、すぐに聞くのではなく、「どのように聞くと自然だろうか」と冷静になりましょう。はじめのうちは難しく感じるかもしれませんが、習慣づけることで相手に嫌がられることなく自身の承認欲求を満たせるようになります。
ありのままの自分を受け入れる
自己承認欲求は、「自分を良く見せたい、周りからよく見られたい」という劣等感からくる感情です。ありのままの自分を受け入れるためには、自分の嫌だと思う部分も含めて受け入れることが重要です。
そのためには、「自分はこうでなくても大丈夫」と割り切り、「他の人は同じ優劣で考えていない」と考えるようにしましょう。また、「自分は○○のような人間ではない」と思うことも大切です。
すべての人に好かれようとしない
生きていくうえで多くの人との関わりがありますが、すべての人から好かれることは難しいでしょう。人にはそれぞれ相性があるため、合う・合わないが出てくるのは当然です。人に好かれたいがために自分の意見を言えなくなったり、相手の顔色をいつもうかがってばかりいたりすると、窮屈な生活になっていきます。
すべての人に好かれなくてはいけないと考えている人は、「何人かは合わない人もいるだろう」と気楽に考えるようにしてみましょう。
自分の価値観を広げる
自分の価値観を広げるためには、「人の数だけ考え方は多様にある」ことを知る必要があります。今まで留まっていた場所から一歩踏み出し、ほかのコミュニティに所属している人と関わってみるなどの変化をもたせましょう。
今まで関わりのなかった人たちの話を聞くうちに、自分の価値観の狭さに気づき、承認欲求へのこだわりが減少していきます。ジャンルの違う人たちとの関わりは、自分の価値観を広げる手助けになってくれるでしょう。
SNSから離れてみる
自分への評価が可視化されるSNSから離れてみるのもおすすめです。そのためには、「SNSを確認できる機器から離れる」ことや「SNSへログインする回数を決めておく」などのルールを決めておきましょう。
どうしても気になってしまい見てしまうという人は、アカウントを削除してみたり、アプリ自体をアンインストールしたりして強制的に利用できないようにするなどの方法があります。自分の評価が気になる人にとって、SNSは気疲れの原因になるため、いったん距離を置くことで気休めになるでしょう。
承認欲求が強くて悩んでいる人は、オンラインカウンセリングを利用してみよう
承認欲求は、誰しもが持つ欲求の一つです。しかし、強く性格や言動に現れるタイプの人もいれば、内側に溜め込んでしまう人もいるでしょう。承認欲求は消せるものではないため、理解して自分の一部として受け入れることが大切です。
自分の承認欲求の強さについて悩みを抱えている方や相談してみたい方は、オンラインカウンセリングをご検討ください。「こころケア」には、医療機関での臨床経験の豊富なカウンセラーが在籍しているので、安心してご相談ください。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平
国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)