強迫性障害の原因と主な症状は?セルフチェックと治し方も解説!
2024.11.15
強迫性障害とは、無意味に見える行為や思考が頭から離れず、日常生活に影響を及ぼす病気です。今回は、強迫性障害とはどんな病気かについて、症状、原因、治療方法について分かりやすく解説します。
あなたがこの症状で悩んでいる、または周りにそうした人がいる場合、本記事を読むことでどのように対処すべきかの具体的な知識と理解を得られます。さらに、強迫性障害に対する理解を深めることで、より良いメンタルヘルスを維持するための一助となるでしょう。
強迫性障害とは

強迫性障害とは、自分の意に反して頭に浮かんできてしまう考え(強迫観念)から逃れられず、それで生まれる不安を消すために、同じ行動(強迫行動)を何度も繰り返す病気です。
たとえば、繰り返し手を洗う、ドアの鍵や電気のスイッチなどを何度も確認するなどの行動をとります。こうした行為自体は誰でも経験があることですが、強迫性障害の人はそれが日常生活に大きな影響を与えます。たとえば、鍵がちゃんと閉まっているか繰り返し確認する時間が長すぎて、仕事に行けず失業する、戸締りが心配で家から出られず引き篭もるなど、側から見ると異常に見える行動を繰り返すのです。
この病気は、世界保健機関(WHO)によって「経済損失および生活の質の低下に影響する10大疾患」の1つとして認知されています。
日本人の有病率は1〜2%ほどです。男女差はほとんどなく、最も発症が多い年齢はだいたい20歳前後ですが、男性のほうが若い年齢で発症する傾向にあります。経過中、うつ病を合併する割合は30%を超えます。他にも不安障害や、パーソナリティ障害、自閉症など、他の病気との合併がよく見られます。アルコールを飲みすぎたり、薬を飲みすぎたりする人も、他の不安障害の人よりも多いです。
強迫性障害は、以前は不安障害の一種だとされていましたが、現在では強迫症候群、つまり強迫スペクトラム障害として分類されています。強迫スペクトラム障害の代表的なものをいくつか示します。
【強迫スペクトラム障害の種類】
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身体醜形障害(自分の体の一部分について必要以上に悩む)
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ため込み障害(必要のない物を捨てられずため込んでしまう)
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抜け毛症(自分の髪の毛を引き抜いてしまう)
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皮膚むしり症(自分の皮膚をむしる行為がやめられない
強迫性障害の特徴的な点として、自分で自分の行動が割に合わず、ばかばかしいことを認識しているのに止められないことが挙げられます。放っておくと不安や不条理な行動はどんどん強くなり、日常生活に支障をきたします。心配な点がある方は、専門家に相談し、適切な治療を受けることを強くおすすめします。
強迫性障害の症状

強迫性障害の主な症状は、強迫観念と強迫行動です。
強迫観念とは、思い通りにならない考えやイメージが頭に浮かんできてしまうことを指します。強迫行動とは、心配や怖さを少しでも鎮めるために、同じことを何度も繰り返す行動です。たとえば、何度も繰り返し手を洗う、鍵がちゃんと閉まっているか確認するため家に戻ることを繰り返すことなどがそれに当たります。
不潔恐怖と洗浄
「不潔恐怖と洗浄」は、自分が汚れている、あるいは病気になる可能性があるという過剰な恐怖や不安からの行動です。
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手が汚れていると感じた
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汚いものに触ってしまった
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触ったものから感染した
上記のようなことを感じた場合、その恐怖を和らげるために以下のような行動をとります。
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手の皮が剥けるまで手を洗い続ける
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シャワーに出たり入ったりを長時間繰り返す
これは一見、一般的な潔癖症と似ていますが、根本は大きく異なります。潔癖症はただ単に清潔さを好む性格や習慣であるのに対し、強迫性障害の不潔恐怖と洗浄は、恐怖や不安からくる強迫的な行動です。この違いを理解することは、とても重要なことです。
加害恐怖
「加害恐怖」とは、自分が他の人に嫌なことをしてしまうのではないかと心配する状態のことです。たとえば、「人を傷つける夢を見た。それって、本当にそうなってしまうのでは?」と不安になったり、「物を取ったら、それを使って他人を傷つけてしまうかもしれない」と怖くなったります。
「加害恐怖」による行動の例としては、以下のようなものがあります。
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安心するために「自分の行動が大丈夫かどうか」何度も繰り返し確認する
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周りの人に、「自分は他人を傷つけていないかどうか」をしつこく聞く
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危ないと思うものは触らないように、生活様式を徹底的に変える
確認行為
「確認行為」とは、心の中にある不安や心配事をなくすために、同じことを何度もチェックすることをいいます。「確認行為」の代表的な例をいくつか挙げておきます。
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戸締りの確認のため、ドアノブを壊れるまで何度もガチャガチャさせる。
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さらにドアを離れても何度も心配で戻ってきて、戸締りできているかチェックを繰り返す。
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電気やガスを消したかどうか、何度もスイッチや元栓を凝視したりいじったりする
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手紙を出す時、長時間繰り返し見直してしまい、結局出せなくなる
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物を置くとき、所定の場所においたかどうかをチェックするために何度も戻ってくる
「確認行為」の裏には、自分や大切な人が危ない目に遭わないようにしたいという強い心配が隠れています。
儀式行為
「儀式行為」とは、不安や怖さを少しでも減らすために、同じ動作を何度も繰り返してしまうことです。「儀式行為」の代表的な例としては、以下のようなものがあります。
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何度も繰り返し手を洗う
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物の置き場所をチェックする
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決まった数を数えながら行動する
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同じ言葉を繰り返し言ったりする
これらの動作は、見ている人には意味がないように見えるかもしれません。でも、強迫性障害の人にとっては、これらの動作をやめてしまうと、我慢できないほど強い不安が襲ってくるのです。
ただ、こうした動作は、不安を和らげてくれるのはしばらくの間だけです。不安がふたたび強くなると、また同じ動作を繰り返してしまいます。この繰り返しの状態が、強迫性障害の難しい部分であり、終わりのないループともいえるものなのです。
数字へのこだわり
「数字へのこだわり」は、ある特定の数字に対する不合理な恐怖や神聖視、あるいは逆に嫌悪感から発生します。その結果、特定の数字に関連する行為を避けたり、逆に特定の数字を使わなければならないという強迫観念に駆られます。
たとえば、「13」という数字を避ける「トリスカイデカフォビア」は有名です。13階をスキップしたビルや、13日の金曜日を恐れる人たちが良い例です。逆に、「7」や「3」といった特定の数字が「ラッキーナンバー」として神聖視され、日常生活の中でそれらの数字を必要以上に重視するケースも見られます。
しかし、これらは単なる迷信や好みとは異なります。強迫性障害では数字へのこだわりが日常生活に影響を及ぼすほど強く、理不尽なほど不安を感じ、それに対処するために特定の行動を強迫的に繰り返す特徴があります。
ものの位置や対称性へのこだわり
「ものの位置や対称性へのこだわり」は、「もしも物がきちんと並んでいなかったら、なんか良くないことが起きるかもしれない」という不安や恐怖から来ています。
具体的な例として、以下のようなものがあります。
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デスクの上のペンやノートの位置が完全に整っていなければ整うまで直し続ける
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部屋の家具の位置がぴったり揃っていないと落ち着かず、何度も直す
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プリントの折り目が気になり、ピッタリ合うまで折り直す
これらは、普通の人にとっては小さなことかもしれませんが、強迫性障害の人にとっては大きなストレスとなり、普通の生活を送るのが難しいレベルで気になってしまうのです。
強迫性障害の原因

強迫性障害がどうして起こるのかは、まだはっきりとした原因は判明していません。脳の中の特定の場所や、遺伝、周りの環境が関わっているかもしれないという研究結果が散見されます。ただ、これらがどのように絡み合って強迫性障害が生じるのかについて、明確な答えは出ていません。
とはいえ、日々の生活で大きなストレスを抱えていたり、性格にある一定の傾向があったりすると、強迫性障害になりやすいという研究結果もあります。たとえば、責任感が強過ぎるほか、何事も完璧にしたいと思う性格などです。
強迫性障害が起こりやすい出来事
例えば、友達や職場での大きな悩みは、気づかないうちに心を不安にさせ、強迫性障害の思考や行動につながる可能性があります。人間関係のトラブルや、仕事で大きなミスをしたときなど、普段よりも強いストレスを感じるとき、不安や怖さを和らげるために、強迫的な行動をとるようになることがあります。
さらに、赤ちゃんができたり、産まれたりといった人生にとって大きな出来事も原因になることがあります。これらの出来事は、体や心の変化、新たな責任から強いストレスを感じ、それが強迫性障害を引き起こすきっかけとなり得ます。
強迫性障害が起こりやすい人の特徴
「強迫パーソナリティ(強迫性格)」という性格傾向があります。これは、ルールや手順、形式を大切にする性格傾向です。形式を重んじ、融通がきかない、しっかりと順序を守りたいという気持ちが強く、物事を完全に行いたいと思うあまり柔軟に対応するのが苦手です。
強迫パーソナリティ(強迫性格)の人は自身にも他人にも厳しいことが多く、事物が順序立てられていないと気が落ち着かない傾向があります。たとえば、部屋の家具の位置がずれていると気に入らず、また仕事はいつも完璧にできていないと落ち着きません。これらが強迫行動につながり、日常生活に支障をきたすことがあります。ただし、強迫パーソナリティ(強迫性格)を持っているからといって必ずしも強迫性障害になるわけではありませんので、過度に心配せず、適切な支援を受けることが大切です。
強迫性障害の治し方

強迫性障害の主な治し方には、薬物治療とカウンセリング・認知行動療法があります。
【強迫性障害の治し方】
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薬物治療
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カウンセリング・認知行動療法
薬物療法とカウンセリング・認知行動療法はいずれも治療効果が証明されているものです。実際の治療は、患者さんの希望に応じてこの2つを併用して行うのが一般的です。ここでは、薬物治療とカウンセリング・認知行動療法についての概略をわかりやすく解説いたします。
薬物治療
薬物療法とは、病気を和らげ、元の生活を取り戻すために薬を使う方法です。強迫性障害の治療には、主に「抗うつ薬」や「抗不安薬」が用いられます。
これらの薬は、脳の中で神経の伝える情報のバランスを整え、不安や焦りを和らげる力があります。その結果、不安からくる行動を抑え、日常生活に支障が出ないようにするが期待できます。
ただ、薬は医師の診察を受けて、医師から指示されたとおりに使うことが大切です。自分だけの判断で薬を飲んだり止めたりするのは避けましょう。また、薬物療法は話し合いを通じて考え方を直す「認知行動療法」と一緒に行うことがよくあります。
カウンセリング・認知行動療法
カウンセリングとは、悩みをプロのカウンセラーと話すことで、困っていることを解決するための道を一緒に考える手法です。認知行動療法は、自分が困る考え方や行動のクセを見つけて、それをより良い形に変えていく方法です。
強迫性障害に効果的な認知行動療法として、「暴露反応妨害法」と「森田療法」がよく使われます。次の部分では、この2つの方法について、分かりやすくご説明します。
暴露反応妨害法
「暴露反応妨害法」という方法は、困っている人自身が、困り事を思い出させる状況に故意に触れる方法です。そうすることで、困りごとに対する怖さや不安を実感し、その怖さや不安が大げさになっていないか、反応が大きすぎないかを見直すことを目指します。この方法は、カウンセラーや精神科の医師の助けを借りて行います。
森田療法
森田療法は、怖い気持ちや不安を「そのまま」受け止め、反応しないよう学習する方法です。さらに、その不安の背後にある「生きるための欲求」を、毎日の生活にうまく活かせるようになるのが目標です。通常は精神科の先生や心理の専門家が行いますが、病院に行くことが怖いと感じる方も多いです。
そんなとき、「こころケア」のようなネットを通じたカウンセリングが役立ちます。病院までの移動時間や待ち時間がなくなり、自分の家や落ち着く場所から治療が受けられるという便利さがあります。さらに、名前を明かさなくても受けられるので、病気や自身のことを知られたくない人にもメリットが大きいです。
また、治療が終わってから再び病気にならないために、また予防するためには、自身で気をつけることが大切です。ストレスを上手に扱うこと、適度な運動、バランスのよい食事、しっかり寝ることなど、心と身体を元気に保つための習慣をつけることが大事です。「こころケア」はこれらの日々の生活のサポートも提供し、自分の心と上手く向き合うための力になります。
まとめ
強迫性障害について基本的な事柄をまとめました。強迫性障害は、どうしても頭から離れない考えがあるほか、特定の行動を繰り返さざるを得ないと感じてしまう病気です。このような考えや症状でお困りのときにおすすめなのが、専門家とのカウンセリングです。
「こころケア」は、心の健康を支えるためのオンラインの相談所です。場所を選ばず、手元のスマートフォンやパソコンさえあれば、カウンセリングを受けることができます。
悩みをすぐにでも話したい方も、ゆっくりと相手を見つけたい方も、「こころケア」がしっかりとサポートします。悩みから自由になり、心穏やかに毎日を過ごすための一歩が「こころケア」です。もし少しでも興味をお持ちになったら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平
国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)