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カサンドラ症候群とは?症状やなりやすい人の傾向・治療方法を解説

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カサンドラ症候群とは、自閉スペクトラム症(ASDやアスペルガー症候群)の人とのコミュニケーションが上手くいかないことによって、パートナーや家族などの身近にいる人が精神的に苦しい思いする状態のことです。

ここではカサンドラ症候群について悩む方に向けて、症状や原因、治療方法や改善方法を説明し、専門的な機関やオンラインカウンセリングを受けることについても触れていきます。

カサンドラ症候群とは

カサンドラ症候群(Cassandra Syndrome)は、自閉症スペクトラム障害(ASD、アスペルガー症候群)を持つ人のパートナーや家族が経験する心理的状態のことです。「カサンドラ情動剥奪障害」や「カサンドラ状態」と呼ばれることもあります。

コミュニケーションがうまく取れず、ASDの人に対する周囲の人からの配慮や感情が無視され、理解されないことによるストレスや孤独感、不満が生じ、精神的・身体的な不調につながります。

2023年6月時点で、カサンドラ症候群は正式な病名として確立されているわけではなく、一種の状態として捉えられています。そのため、アメリカの精神医学会が発行している精神疾患の診断や統計のマニュアルであるDSM-5にカサンドラ症候群は記載されておりません。

カサンドラとは

カサンドラという言葉は、ギリシャ神話に登場するトロイの王女の名前です。彼女は神から与えられた予知能力を持っていましたが、同時に、予言が現実となることを人々に信じてもらえない呪いも受けていました。

彼女の警告は周囲の人に無視され、真実を伝えても信じてもらえないという苦難を経験していたことから、それにちなんでカサンドラ症候群という名称が使われるようになりました。

カサンドラ症候群はどんな症状?

では、カサンドラ症候群にはどのような症状が現れるのでしょうか。ここでは、身体面に現れる症状と精神面に現れる症状に分けて紹介します。ASDの方の症状の重症度によって、カサンドラ症候群の方の症状の程度も変わります。

身体面の主な症状

  • 不眠

  • 頭痛や偏頭痛

  • 体重の大きな変動

  • 自律神経失調症

精神面の主な症状

  • 抑うつ状態
  • パニック障害
  • 自己肯定感の低下
  • 情緒不安定
  • 罪悪感
  • 無気力
  • 疲労感・倦怠感

これらの症状が見られた場合、カサンドラ症候群である可能性があるでしょう。

症状に自覚がありながらも、周囲の人の理解が得られないと、うつ病や適応障害など他の精神疾患につながる恐れがあります。

カサンドラ症候群の主な原因

カサンドラ症候群の原因について、ここでは以下2点に注目して、説明します。

  • ASDの方のパートナーや家族の言動に対するストレス

  • 周囲の人に理解してもらえないことによる孤独感

ASDのパートナーや家族の言動に対するストレス

ASDの方とのコミュニケーションがうまくいっていないときに、カサンドラ症候群は起こります。コミュニケーションの不成立について、ASDの本人や周囲の方に説明しても理解が得られないことにより、パートナーや家族の方がストレスを抱え込んでしまうことがカサンドラ症候群の原因です。

ASDの特徴には、感情の共有が苦手で対人関係を築くことが難しいことや、特定の物事に対する興味やこだわりが強いことが挙げられます。ASDの方の行動が予想しにくく、それをコミュニケーションで解決しようとしてストレスを感じると、カサンドラ症候群が起こると考えられます。

周囲の人に理解してもらえないことによる孤独感

カサンドラ症候群では、パートナーや家族がASDの人との関係で直面する困難さや心配事などが、周囲の人々に理解されないことが多くあります。これにより孤立感や孤独感が生じ、理解してもらえないという経験から、心理的な負担を増大させる要因となります。

第三者からすると、「あの人があんなことをするの?」とASDの方が取る行動を信じられないことが多く、誰かに理解されることがないことから家族やパートナーがストレスや苦しみを抱え込んでしまい、カサンドラ症候群が起こる原因につながるのです。

カサンドラ症候群になりやすい人の性格的な傾向

続いて、カサンドラ症候群になりやすい人の傾向について説明します。

カサンドラ症候群になりやすい人の性格的な傾向

  • 真面目

  • 面倒見が良い

  • 忍耐強い

  • 完璧主義

  • 几帳面

以上のような性格の方は、ASDの方とのコミュニケーションにズレを感じても我慢し、受け入れようとすることでストレスや苦痛を感じてカサンドラ症候群の状態になる可能性があります。

あくまで傾向なので、どのような性格の方でもカサンドラ症候群になる可能性があることは覚えておきましょう。

カサンドラ症候群の治療・改善方法

カサンドラ症候群は、治療・改善が可能です。主な対処法として、以下について説明します。

  • ASDの特性・対応方法の理解を深める

  • パートナーや家族との決めごとをつくる

  • 自助グループに参加する

  • 専門機関でのカウンセリングを受ける

ASDの方の特徴について理解を深めることや、コミュニケーションにルールを設けること、また、理解のある人に話を聞いてもらうことなどが挙げられます。

ASDの特性・対応方法の理解を深める

まず、ASDの特性や行動パターンについて理解を深めることが重要です。情報を収集し、専門家やサポートグループ、経験者から助言を得ることで、より適切な対応方法を見つけることができます。

なかにはASDの自覚がない方もいるため、パートナーや家族と一緒になってASDについて理解を深めることが必要な場合もあるでしょう。

お互いに困るポイントやタイミング、どのようなときにどう認識がズレたのかを確認し合うことで、理解を深めることができます。

パートナーや家族との決め事をつくる

カサンドラ症候群の状況を改善するためには、パートナーや家族とのコミュニケーション・協力が不可欠です。

日常のコミュニケーションにおいて認識がズレやすいポイントがわかったら、そのときにお互いがどのような行動を取るかルールを決めておくと、お互いの精神的な負担を減らすことができるでしょう。

たとえば、「話し合いのときは一通り話してからもう一方が話す」「思ったことを伝えるときはどのような感情でいるか、最終的にどのような行動をとって欲しいかを伝える」「感情的に話さない」など、お互いに無理のない範囲で決めるとカサンドラ症候群の症状を抑えられる可能性が高まります。

自助グループに参加する

自助グループとは、同じ問題を抱える人たち集まり、お互いの話を理解してサポートし合うグループのことです。カサンドラ症候群の方が自助グループに参加することによって、情報交換やアドバイスの共有ができます。

ASDに関して似た境遇にある人々との交流は、安心して自分の悩みを吐き出すことができるため、孤独感の軽減やストレスの解消に役立ちます。

自助グループによって異なる点はありますが、参加したい場合は直近で開催されている会を確認してみるとよいでしょう。不安な場合は、運営元へメールや電話などで問い合わせてみてください。

専門機関でのカウンセリングを受ける

専門機関でのカウンセリングや心理療法を受けることも良い方法です。カウンセラーやセラピストによって、カサンドラ症候群に関連するストレスや、心理的な負担を解消するためのサポートが受けられます。

発達障害者支援センターの相談支援や、ASDを専門とする精神科、発達外来などの診察によって、適切なアドバイスを受けることができます。

ASDの方とのコミュニケーションによって生まれるストレスは、知識や経験がないと理解されにくいものなので、専門的な機関を選んで相談しましょう。また、発達障害者支援センターの利用は各都道府県によって異なるため、Webサイト等で利用方法を確認しておきましょう。

大まかな流れとしては、窓口に行って支援内容の決定、連携すべき機関があればその連絡をしてもらえます。

カサンドラ症候群の改善には、オンラインカウンセリングもおすすめ

カサンドラ症候群の改善のためには、身近に相談しやすい人を持つことが大切です。定期的なカウンセリングが受けられるように、場所に限定されずに気軽に受けられるオンラインカウンセリングを利用してみてもよいでしょう。

【オンラインカウンセリングのメリット】

  • 外出や移動をしなくてもよい

  • 通院しているところを第三者に見られる心配がない

  • 対面のカウンセリングよりも安価で受けられる場合がある

「こころケア」は、スマホとインターネット環境があり、プライバシーが守られ安心して話せる場所であれば、どこからでもカウンセリングを受けることができます。医療機関での臨床経験があるカウンセラーや、複数のカウンセラーから相談相手を選ぶことができます。

まとめ

カサンドラ症候群について、その原因や症状、カサンドラ状態になりやすい性格、治療法・改善方法について説明しました。カサンドラ症候群は、 ASDの方とのコミュニケーションによるストレスで、パートナーや家族がストレスや何らかの不調を起こす状態のことです。改善のためには、ASDに対する適切な理解とコミュニケーション上のルールを決定すること、また、自助グループや専門的な知見がある機関に相談することが大切です。

第三者への相談が難しい場合は、オンラインカウンセリングを利用するのも良いでしょう。

大切な人のためにも、ひとりで抱え込まずに相談してくださいね。

 

記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)