燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは?主な症状や原因、対処法について解説
意欲や熱意を失い燃え尽きた状態に陥る「燃え尽き症候群」は、誰にでも起こりうる可能性があります。自分は大丈夫と思っていても、一度燃え尽き症候群の状態の陥ってしまうと、回復までには時間がかかってしまうでしょう。
この記事では、燃え尽き症候群の症状や原因、また予防する方法を紹介します。燃え尽き症候群になりやすい人や環境についても紹介するので、予防に取り組みたいと考えている方はぜひご一読ください。
燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは
「燃え尽き症候群」とは、名称の通とおり、これまで持っていた熱意や意欲が燃え尽きたようになくなってしまう状態のことです。「バーンアウトシンドローム」とも呼ばれ、バーンアウトは直訳で燃え尽きる・焼き尽くすといった意味があります。
一つのことにたいして、過度に頑張ったことが原因となることが多いです。努力に見合う成果をあげられなかった、目標を達成し打ち込めるものがなくなった人などがなりやすいでしょう。医学的には「うつ病」の一種ともいわれています。
燃え尽き症候群の3つの症状
燃え尽き症候群の人に見られる症状は、以下の3つになります。
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情緒的消耗感
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脱人格化
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個人的達成感の低下
情緒的消耗感
情緒的消耗感は、「情緒」が「消耗」するという言葉の通りに、力を尽くした結果、情熱が燃え尽き意欲や熱意が低下している状態を指します。
特徴は身体的な疲れではなく、情緒的であるという部分です。「今まで楽しいと思って取り組んでいた仕事が、つまらなく感じる」「仕事に尽力しすぎた結果、身も心も疲れ果てたと感じる」といった状態に陥ります。
一生懸命頑張ったのに、それに見合う成果を得られないため疲れ果ててしまうのです。
脱人格化
脱人格化は、これまでの人格が嘘だったかのように周りに対して思いやりのない態度をとったり、攻撃的になったりするのが特徴です。
人は熱意や意欲といったエネルギーが失われると、自分を守るために人格を脱した行動を起こしてしまいます。「同僚や顧客の顔を見るだけでイライラする」「いつもしていた周りへの気配りをしたくないと思う」といった状態になることもあるでしょう。
何か問題が発生した場合に人のせいにすることや、他人の悪口が多くなるのは脱人格化の典型的な行動といえます。
個人的達成感の低下
個人的達成感の低下は、仕事で得られていた達成感を失ってしまうことです。情緒的消耗感が現れ、脱人格化の状態に陥った後は、個人的達成感の低下へと結びついていきます。
「仕事を終えたのに達成感がない」「仕事をやり抜く力が自分にあると思えない」といった気持ちが大半を占めます。
仕事の成果も達成感も得られなくなった結果、自尊心が傷つけられ退職や休職にまで追い込まれる場合もあります。
燃え尽き症候群を起こす要因
燃え尽き症候群を起こす要因には、以下があります。
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個人要因
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環境要因
それぞれの特徴を理解して燃え尽き症候群になりやすい人や、なりやすい環境を理解することが大切です。
個人要因
燃え尽き症候群になりやすい人の特徴として、とにかく真面目に他者と深く関わる、また、仕事に対しても熱心に取り組むということがあります。
人との関わりはストレスを感じやすいため、情緒的な消耗も起きやすく、また、たくさんの仕事をやり切ろうと努力すると、成し遂げられなかった場合に深く落ち込んでしまい、悩みやすくなるのです。
燃え尽き症候群になりやすい人
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期待されている以上の成果を出そうと頑張る人
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仕事で手を抜かない、完璧を求める人
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同僚や顧客との関係性を深く築こうとする人
とくに、「頑張り屋さん」「完璧主義者」といわれる人は注意が必要です。
自分が掲げた目標や理想を達成できなかったとき、燃え尽き症候群に陥る可能性が高くなるとされています。
環境要因
燃え尽き症候群になりやすい環境で最も多いのが、職場での過剰な負担によるものです。
職場だけでなく、親の介護による身体的な負担も、燃え尽き症候群になる環境要因の一つと捉えられます。自分の意志ではなく、他者からの強制によるものであれば、影響はさらに深刻になるでしょう。
燃え尽き症候群になりやすい状況
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仕事を強要される
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評価を感じられない
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仕事とプライベートの切り替えができない
過重負担のある環境は、燃え尽き症候群になりやすい状況であるため注意が必要です。とくに、残業が多かったり厳しいノルマが課せられたりする職場の場合、ストレスを感じやすくなり心身への負担が大きくなるでしょう。
なお、報酬や昇給など、努力に見合う成果が得られない職場環境も、モチベーションを保ちながら働くことが困難になります。
最近では、リモートワークが広まったことにより、仕事とプライベートの切り替えができないというケースもあります。仕事とプライベートの境界線がないような状況では、心身ともに負担となるでしょう。
燃え尽き症候群の簡易チェックテスト
1980年頃の研究で開発された「マスラック・バーンアウト・インベントリー(MBI)」という燃え尽き症候群のチェック項目があります。
日本で有名なのは、MBIをベースに作成された日本版バーンアウト尺度(JBS)です。JBSには、情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成感の各項目が含まれています。
それぞれの質問に対して「1.ない」から「5.いつもある」まで5段階の選択肢から回答します。なお、この簡易チェックテストはあくまでも個人的な参考程度にとどめ、正確な診断については、診察時に医師に相談しましょう。
1 | こんな仕事、もうやめたいと思うことがある。 |
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2 | われを忘れるほど仕事に熱中することがある。 |
3 | こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある。 |
4 | この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。 |
5 | 同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。 |
6 | 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。 |
7 |
1日の仕事が終わると 「やっと終わった」 と感じることがある。 |
8 | 出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある。 |
9 |
仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。 |
10 |
同僚や患者と、何も話したくなくなることがある。 |
11 | 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。 |
12 | 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。 |
13 | 今の仕事に、心から喜びを感じることがある。 |
14 | 今の仕事は、私にとってあまり意味がないと思うことがある。 |
15 |
仕事が楽しくて、知らないうちに時間がすぎることがある。 |
16 | 体も気持ちも疲れはてたと思うことがある。 |
17 | われながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある。 |
引用:労働政策研究・研究機構|バーンアウト(燃え尽き症候群)
燃え尽き症候群になったときの対処法
万が一、自分が燃え尽き症候群になってしまったときの対処法も、押さえておくと良いでしょう。燃え尽き症候群になったときの対処法は以下の3つです。それぞれ対処法について解説していきます。
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回復するために休息をとる
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病院やクリニックへ相談
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カウンセリングを受ける
回復するために休息をとる
燃え尽き症候群の症状が現れたときは、まず回復するために休息をとる必要があります。可能であれば、仕事を休職し心と体を休ませることがおすすめです。
原因が職場環境の場合、症状の要因となる場所から距離をとることが、メンタルヘルスのためにも重要だからです。頑張り屋さんや完璧主義者ほど、自分を甘やかしていると思ってしまうかもしれません。
しかし、決して甘えではなく、今の自分にとって最も大切なことが「休息をとること」と考え、睡眠時間を確保しリラックスした生活を送ることが大切です。
気持ちのリフレッシュができた後、今後のキャリアについて考え同じ職場に戻るのか、職場を変えるのか考えてみるのも良いでしょう。
病院やクリニックへ相談
燃え尽き症候群の原因となるストレス要因を除外したのにも関わらず、状態が良くならない場合はうつ病や適応障害などの精神疾患を発症しているかもしれません。
精神疾患の場合も休息は大切ですが、状態が思わしくないようであれば、適切な治療を開始しないと回復が難しい可能性もあります。仕事や日常生活において支障をきたすほどの症状が出ているときは、病院やクリニックへ相談してみるのもおすすめです。
診断結果によって、本人の状態に合わせた薬物療法や精神療法といった治療が開始されます。
カウンセリングを受ける
燃え尽き症候群は、本人よりも先に周りの人たちが気づくケースが多くあります。周りからの指摘や自分でも変だなと感じたときは、一度誰かに気持ちを吐き出してみるのも良いでしょう。
周りの人に相談することが苦手な人は、カウンセリングを受けることを検討するのもおすすめです。カウンセリングでは、何が原因となり燃え尽き症候群に陥っているのかを一緒に考え、改善できるように少しずつステップを踏むサポートをしてくれます。
また、「病院での診断が怖い」「周りに相談できる人がいない」といった悩みがある人は、「こころケア」のオンラインカウンセリングの利用もよいでしょう。自宅でリラックスしながら受けられるオンラインカウンセリングは、対面の場合よりも緊張感が少なくて済むこともメリットといえます。
また、「こころケア」では、事前にカウンセラーの資格などを把握してから相談ができます。「なかなか人に相談できない」「家族や友人に心配をかけたくない」と考えている人は、一度「こころケア」への相談を考えてみてはいかがでしょう。
燃え尽き症候群を予防するための方法
燃え尽き症候群を予防するための方法は、以下になります。
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バランスのよい食事と睡眠時間をしっかり確保する
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仕事とプライベートの線引きを意識する
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楽しいことを見つける
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適度に身体を動かす
燃え尽き症候群は誰にでも起こる可能性があります。予防するための方法について解説していきましょう。
バランスのよい食事と睡眠時間をしっかり確保する
どんなに仕事が忙しくても食事と睡眠時間を確保することが、基本的な予防策です。
良い仕事をするためには、心身ともに健康でなくてはいけません。バランスの良い食事で健康を気遣い、質の良い睡眠でしっかり身体を休めましょう。
仕事とプライベートの線引きを意識する
燃え尽き症候群の予防のためには、仕事とプライベートの線引きを意識することも重要です。
両者の切り替えがうまくできず、常に仕事モードでいる状態では十分な休息を得られないので、燃え尽き症候群の要因となるストレスは溜まる一方です。
仕事とプライベートの時間のバランスを考え、自分の時間を増やすことを意識しましょう。
楽しいことを見つける
新しい趣味を見つけたり、何かに挑戦してみたり、友人や家族と交流する時間を作ったりしてみるのもおすすめです。
仕事だけに幸福を求めてしまうと燃え尽き症候群になりやすいため、仕事以外で楽しい時間や集中してできる何かを見つけることが予防につながるでしょう。
適度に身体を動かす
燃え尽き症候群の予防では、適度に身体を動かすことも大切です。
運動はストレスの自然療法の一つとされており、ネガティブな気持ちを発散させたり、心と体をリラックスさせたりする効果が期待できます。
軽めのランニングやサイクリングなどの有酸素運動が特に効果的とされていますが、近所を散歩することや公園などで自由な時間を過ごすことも、十分効果があります。
まとめ
何事にも真剣に一生懸命取り組む人ほど、燃え尽き症候群に陥りやすくなります。予防する方法としては、しっかり休息をとることや仕事とプライベートの切り替えを意識することなどが大切です。
もし自分に燃え尽き症候群の症状が現れ、対処が難しく悩んだ場合は、カウンセリングを受けるのもおすすめです。燃え尽き症候群の原因が何なのかを、一緒に考えてくれる「こころケア」への相談を検討してみましょう。
オンラインカウンセリング「こころケア」は、スマホとインターネット環境があり、プライバシーが守られる場所であれば、どこからでもカウンセリングを受けられます。医療機関での臨床経験を積んだカウンセラーが在籍しているので、安心してサービスを利用できます。深刻な状況に陥る前の早めのケアが重要なため、悩んでいる方はぜひ一度相談してみてください。
記事監修
公認心理師 櫻井 良平
国家資格
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- キャリアコンサルタント
- 社会福祉士
- 保育士
所属学会等
- 日本認知療法・認知行動療法学会
- 日本発達障害支援システム学会
(第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
- 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
- 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
- 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
- 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
(開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)