コラム

広場恐怖症の症状と原因とは?なりやすい人の特徴や治し方を紹介

精神疾患・精神障害

広場恐怖症は、特定の場所や出来事などで恐怖や不安を感じてしまう疾患です。強い恐怖心を感じるなど症状は多岐にわたり、日常生活に支障が出ている方もいます。

今回は広場恐怖症の症状や、原因について詳しく解説します。日常生活への影響や治療法も説明しているため、症状を改善したい方はぜひ参考にしてみてください。

広場恐怖症とは

広場恐怖症とは、不安症の一つで、特定の場所を訪れたり特定の状況に陥ったりした時に不安や恐怖を異常に感じてしまう疾患です。女性の2%、男性の1%が発症していて、多くの場合35歳までに起こります。日常生活に支障をきたすことがあり、自宅に引きこもる方もいます。

また、発症している人の3~5割程度の人がパニック障害を併発しています。パニック障害については、以下の記事でも解説しているため、参考にしてみてください。

参考:MSDマニュアル家庭版「広場恐怖症

関連記事:パニック障害の症状と原因とは?パニック障害が起こりやすい人の特徴や治し方を紹介

広場恐怖症の症状

広場恐怖症は、ある特定の場所において強い不安に襲われ、パニック発作のような症状が起こります。広場恐怖症の主な症状は、以下のとおりです。

【広場恐怖症の症状(パニック発作)】

  • 胸の痛みまたは不快感
  • 窒息感
  • めまい、ふらつき、気が遠くなる
  • 死への恐怖
  • 現実感の喪失
  • 発汗
  • 腹痛、下痢
  • しびれまたはチクチク感
  • 動悸
  • 息切れ、窒息感
  • 体の震え
  • 吐き気

これらの症状が同時に発生するケースが多く、公共交通機関の利用や、人前に出ることが困難になり、日常生活に支障をきたしてしまいます。また、人によってはパニック障害の症状を伴わず、恐怖心や不安感だけを強く感じることもあります。

広場恐怖症の人が不安になりやすいシチュエーション例

広場恐怖症の人が不安になりやすいシチュエーション例を紹介します。

  • 銀行やスーパーのレジに並ぶ時
  • バスや電車など公共交通機関利用時
  • 映画館の中央寄りの席に座る時
  • 人混みの中にいる時
  • 外に1人でいる時
  • エレベーターなどの閉鎖的な空間にいる時

すぐに逃げられないような閉塞した場所や助けを求められない状況に、不安や恐怖を抱きやすいです。

広場恐怖症が起こりやすい人の特徴

広場恐怖症が起こりやすい人の特徴は、過去に乗り物に乗った際にトラブルに見舞われた経験があることや、感受性が高いこと、内省的な性格であることなどが挙げられます。

その他の特徴は以下の通りです。

  • まじめで几帳面
  • 責任感が強い
  • 心配性
  • ストレスをため込みやすい
  • 優しい

広場恐怖症は10代から発症する人もいますが、20代~30代の発症が多くみられます。また、男性より女性のほうが発症しやすいことが報告されています。

参考:MSDマニュアル家庭版「広場恐怖症

広場恐怖症の原因

広場恐怖症が起こる原因は、何度もつらいパニック経験を起こした過去の体験から来ています。幼少期にあったつらい出来事や、両親の死や別離、被災するなど、強いストレスがかかる経験があったなどの環境的要因が背後にあるといわれています。

他の原因として、以下の内容も挙げられます。

  • 発作に対する恐怖感
  • 遺伝的な要素
  • 過度なストレス
  • 物事に対して気にしやすい性格
  • 睡眠不足・過度の疲労

また、広場恐怖症は遺伝の影響も大きい疾患です。たとえば両親が広場恐怖症の経験がある場合は、発症しやすくなるかもしれません。

広場恐怖症の診断基準

広場恐怖症は、以下のうち2つ以上の状況で、不安や恐怖が6か月以上続いたときに該当します。

【広場恐怖症の症状が起きる状況】

  • 公共交通機関の利用
  • 駐車場や市場などの広い空間にいる
  • 店や劇場などの閉鎖された空間にいる
  • 列に並ぶ、人が多い場所にいる
  • 自宅の外に一人でいる

さらに、以下の状況がすべて当てはまっている場合、広場恐怖症と診断されます。

  • 症状がほぼ常に同じ状況により引き起こされる
  • 問題の状況を回避するために行動を変えたり、その状況に耐える支えとして同伴者を必要としたりする
  • 症状が実際の危険と釣り合っていない
  • 症状が重大な苦痛を引き起こしているか、日常生活に大きな支障をきたしている
  • 症状が社交恐怖症などの他の精神障害、または炎症性腸疾患などの身体的病気を原因とするものではない

参考:MSDマニュアル家庭版「広場恐怖症

広場恐怖症の治し方

広場恐怖症の治療方法は、以下の3つが挙げられます。

【広場恐怖症の治し方】

  • 薬物療法
  • 暴露療法
  • 認知行動療法

治療期間は、早くても半年から1年間、長ければ2年以上治療をしないといけないケースもあります。広場恐怖症はすぐに回復するような病気ではなく、根気よく治療していくことが必要です。

また、治まったと思っても、何らかの要因で再発してしまう場合も多くあります。治ったからといって油断せずに、継続して治療を受けることが重要です。

薬物治療

薬物治療は心療内科や精神科で、精神科医の処方を受けて行う必要があります。

広場恐怖症における薬物療法は、SSRIと呼ばれる抗うつ薬が処方されるケースが一般的です。抗うつ薬は不安に作用し、効果があらわれるのに数週間かかります。対して抗不安薬は、パニック発作がおこりそうな状況を予測できるときに服用し、一時的に症状を緩和させます。

根本の不安症状にはSSRI、パニック症状には即効性のある抗不安薬を服用する傾向があります。

心理社会的治療(カウンセリング)

心理社会的療法とは、カウンセリング等を行うことで心の悩みに働きかけ、不調の回復をはかる治療法です。

広場恐怖症に効果があると言われている治療法には、以下の2つが挙げられます。

  • 曝露療法
  • 認知行動療法

曝露療法

曝露療法は、不安や恐怖が生じやすい状況に自分を徐々にさらし、不安が軽くなるまで繰り返す方法です。まず不安の度合いを数値化して記録し、軽くなるプロセスがわかるようにすることが特徴です。これを「イメージ曝露階層表」と呼び、程度の軽い場面から強い場面を以下のように数値化します。

  1. 駅のホームに立つ
  2. スケジュールが詰まっている中仕事をする
  3. 病院の待合室の椅子に座る
  4. 1時間以上の会議に出席する
  5. 満員のホールに入る
  6. 1時間半以上、運転する
  7. 電車に乗る
  8. 満員の急行電車に乗る
  9. 渋滞する満員の高速バスに乗る
  10. 満員の地下鉄に乗る

最初は不安の軽い状況から開始し、徐々に不安を感じやすい場面に慣れていくようにします。

たとえば電車の乗るのが怖いと感じている場合、あえて乗るようにします。「不安だけれども大丈夫」という体験を少しずつ積み上げ、自分の感覚をコントロールできるようにしていくのです。

治療計画をしっかりと立て、少しずつ不安や恐怖感を取り除いていくため、治療期間は半年から1年間ほどかかります。

認知行動療法

認知行動療法は、ある出来事に対する自分の考え方や受け止め方を認識し、修正することで不安を軽くする治療法です。再発と慢性化の多い広場恐怖症において重要な治療法と言えるでしょう。

ただし、認知行動療法を行っている医療機関はそう多くはありません。自宅の近辺に認知行動療法を行う医療機関がない場合は、民間のカウンセリングサービスなども視野に入れて探すことをおすすめします。

忙しくて治療を受ける時間が取れない方や、家を出るのも億劫な方には、オンラインカウンセリングという選択肢もあります。

「こころケア」のオンラインカウンセリングは、専門知識を備えたカウンセラーが相談者一人ひとりの悩みに向き合い、丁寧かつ的確なアドバイスをくれます。ぜひ気軽に活用を検討してみてください。

関連記事:認知行動療法とは?具体的なやり方や受ける前に知っておきたいことを解説

まとめ

広場恐怖症は、特定の場所を訪れたり特定の出来事に直面したりすることで発症します。特にパニック発作の症状は多岐にわたるため、治療を受ける際には具体的に症状を伝えられるようにするといいでしょう。

また、広場恐怖症で悩んだときは、相談先としてカウンセリングの利用をおすすめします。「こころケア」ではオンラインカウンセリングを行っており、スマホとインターネット環境があり、プライバシーが守られ安心して話せる場所であれば、どこからでも相談が可能です。不安や恐怖を感じたときは一人で抱え込まず、こころケアのオンラインカウンセリングをぜひ気軽に活用してください。

 

記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)