コラム

ADHDとは?ADHD(注意欠陥・多動性障害/注意欠如・多動症)の特徴や診断基準・改善方法について解説

精神疾患・精神障害

「ADHDという言葉は聞いたことあるけど、特徴や症状がよくわからない」という人は、多いのではないでしょうか。ADHDは、不注意と多動・衝動性を特徴とする発達障害の概念のひとつです。人によって症状はさまざまで、詳しい原因ははっきりとわかっていません。しかし、専門医師の指示のもとでしっかりと治療をすることで、症状が緩和されます。

今回は、ADHDの特徴や症状の改善方法を解説します。診断基準やセルフチェックリストも記載しているため、ぜひ参考にしてみてください。

ADHD(注意欠如・多動症)とは

ADHD(注意欠如・多動症)とは、不注意と多動・衝動性を特徴とする発達障害の概念のひとつです。子ども特有のものではなく、成人してから気づくケースもあります。

近年では、大人のADHDが注目されていますが、ADHDかどうかの判断は、医師の診断を受けることが必要です。ADHDの場合、小学生までに症状が出ていたかどうかが診断の手掛かりとなります。

ADHDの特徴・症状

ADHDは、下図のように「不注意優勢型」と「多動・衝動優勢型」、またそのどちらの特徴も有する「混合型」といった3つのタイプあります。それぞれの特徴によって症状が異なり、一方の特徴が強かったり、両方の特徴があったりなど、人によって傾向が変わります。

不注意優勢型

「不注意優勢型」は、集中力が継続しづらく、注意散漫で忘れっぽいことが特徴です。以下では、ADHDの特徴である「不注意優勢型」の症状を子どもと大人にわけて説明します。具体的な症状は、以下のとおりです。

大人に見られる症状例

  • 考えが整理できない
  • スケジュール管理が苦手
  • ミスが多い
  • 仕事や作業に集中できない
  • タスクを順序立てて行えない

子どもに見られる症状例

  • 忘れ物が多い
  • 約束が守れない
  • 他のことに気を取られやすい
  • 何かを続けられず飽きてしまう
  • 片づけられない
  • 話を聞いていないように見える

大人と子どもの症状に共通して、勉強や仕事への集中が続かない傾向があります。特に大人になると、スケジュール管理やタスクなど、仕事面に影響が出やすいです。

多動・衝動優勢型

「多動・衝動優勢型」は、じっとしているのが苦手で、行動や考えに落ち着きがないことが特徴です。具体的な症状は、以下のとおりです。

大人に見られる症状例

  • 失言をしてしまう
  • 衝動買いが多い
  • 独断で重要事項を決めてしまう
  • 常にそわそわしている
  • 目的のない動きをする
  • 感情が不安定になりやすい

子どもに見られる症状例

  • 席についていられない
  • 順番が守れない
  • 静かに遊べない
  • 手足を動かし続ける
  • じっとしていない
  • 他人の邪魔をする

大人になると、子どものときに出やすい「手足を動かし続ける」「じっとしない」症状が減る場合があります。しかし、動買いが増えたり、相手に失言をしてしまったりと人間関係でトラブルになりやすい傾向です。

ADHDの原因

ADHDの詳しい原因は、はっきりと分かっていません。しかし、考えられる原因として、脳の前頭葉や線条体の機能障害が挙げられます。

前頭葉は注意力や自己抑制と関わっており、ADHDの方は前頭葉がうまく機能しないため、注意散漫になる傾向があるのではないかといわれています。

また、線条体の中にあるドーパミンの反応が異なることで、活動量が増えることがわかりました。さらに、一卵性双生児のどちらかがADHDの場合は、もう片方が50~80%の確率でADHDになることから、遺伝的要因も考えられています。


ADHDの診断基準

ADHDの診断基準は、主にアメリカ精神医学会(APA)のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)が用いられます。DSM-5では、以下の診断基準が設けられています。

DSM-5による診断基準

  • 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
  • 症状のいくつかが12歳以前より認められること
  • 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
  • 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  • その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

引用:厚生労働省|e-ヘルスネット「ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療

一部の神経疾患や身体疾患などが、ADHDに似た症状を引き起こす場合があります。明確な診断を受けるには、小児科や小児神経科、精神科医による医学的評価が重要です。

ADHDの主な治療方法

ADHDと診断された場合は、「心理社会的治療」と「薬物療法」が用いられます。

治療を行う目的は症状の緩和だけではなく、周囲や本人が生きやすくなるための環境調整をしていくことが目的です。どのような治療法が合うかは人それぞれで異なるため、専門外来の医師に従うようにしましょう。

心理社会的治療

心理社会的治療とは、医師や公認心理師とともに自分の症状を理解して、生活していくための工夫や対策をしていくことです。本人や周囲がADHDの特性を理解や症状を対策することで、前向きな気持ちになることが期待できます。主なプログラム内容は、以下の通りです。

  • 環境調整(学校・職場)
  • ソーシャルスキルトレーニング(SST)
  • ペアレントトレーニング

職場の環境調整として、「毎日スケジュールを確認してくれる人を見つける」、「指示を1つずつ行ってもらう」などが例に挙げられます。

薬物療法

ADHDの薬物療法は、集中力を高めたり、落ち着かなさを改善したりなど、神経の働きを調整します。用いられる薬剤の種類や期待できること、注意点は以下の通りです。

薬剤の種類 期待できること 注意点
コンサータ
  • 服用開始の1週間程度で効果を実感しやすい
  • 1日用量は54mgを超えない
  • 覚醒作用があるため、午後の服用は避ける
ストラテラ
  • 不安感が強い方や、落ち着きのなさがある方に使いやすい
  • 1日量は120mgを超えない
  • 内用液の場合、原液のまま飲むこと
インチュニブ
  • 他の薬剤で食欲が落ちる時に飲むと、効果が出やすい
  • 依存性がない
  • 妊婦や妊娠している可能性のある方は服用しないこと
  • 錠剤を噛まずにそのまま飲み込む

 

ADHD症状の改善方法

ADHD症状の改善方法について、紹介します。

  • 運動習慣の確率
  • 睡眠の質の向上
  • 定期的なカウンセリングを受ける

ADHDの症状は、完全になくなるものではありません。しかし、改善方法を身につけることで症状が軽減でき、生活や仕事上で支障が出にくくなります。以降で具体的に説明します。

運動習慣の確立

ADHDの症状を改善するためには、運動習慣をつくることが重要です。

ミシガン州立大学の教授は、幼稚園児から小学校低学年の児童200人を対象に、登校前に有酸素運動をさせる実験を行いました。その結果、プログラムに参加したADHDの症状をもつ子どもたちに、脳機能の改善が見られました。運動によってテストステロンやドーパミンが出ることで、治療薬とおなじメカニズムが起きていると示唆されています。

症状を少しでも緩和させるために、運動習慣を身につけましょう。

おすすめの運動習慣

  • 1日30分程度のウォーキングや早歩き
  • スクワット20回
  • 腹筋20回
  • 腕立て伏せ20回

体力的に難しかったら回数を減らして、毎日継続することが重要です。

睡眠の質の向上

ADHDの症状と睡眠障害には関連があるといわれています。睡眠障害を発症すると、多動や不注意の症状が悪化するという結果が出ているのです。
また興味のあることに夢中になり、夜遅くまで起きている傾向にあるため、睡眠リズムが崩れやすいです。
睡眠の質を上げるためには、以下のような対策をとるとよいでしょう。

睡眠の質を上げるポイント

  • 眠る2時間前にパソコンやスマートフォンを見ない
  • 一日7~8時間睡眠をとる
  • 深酒をしない
  • ウォーキングや筋トレなどの運動を30分程度行う

パソコンやスマートフォンから発せられるブルーライトが睡眠を阻害する要因になり、睡眠の質が下がってしまいます。
離れた場所に置くか、寝室に持ち込まないなどの工夫が重要です。

参照:J-STAGE|特集・第63回日本省に神経学会学術集会|注意欠如・多動症(ADHD)と睡眠障害

定期的なカウンセリングを受ける

ADHDの症状を改善するためには、定期的なカウンセリングを受けることも重要です。カウンセリングでは、自分の人間関係や家族関係の悩み、気持ちについて話します。

1~2週間に1度の頻度で定期的に受けるのが効果的といわれていますが、悩みや相談者の環境によって異なります。カウンセリングを進めていくために、頻度は需要になるため、カウンセラーと相談して決めることが重要です。

ADHDの悩みはオンラインカウンセリングで相談できる

先述のように、ADHDの症状を改善するためには、定期的にカウンセリングを受けることも大切です。

カウンセリングには、「対面カウンセリング」と「オンラインカウンセリング」の2種類があります。対面でのカウンセリングの場合は、カウンセラーと直接1対1で対話をしていくため、不安や緊張が高い方にとっては、ハードルが高いものと感じるでしょう。また、場所によってアクセスがしづらく、通うのを諦めてしまう方もいるのではないでしょうか。

しかし、オンラインカウンセリングであれば、時間や場所を選ばずに、画面を通して対話可能なため、緊張が緩和できます。ADHDの相談としてオンラインカウンセリングを選ぶメリットは、以下の通りです。

オンラインカウンセリングのメリット

  • スケジュールの調整がしやすい
  • 移動時間や交通費の節約になる
  • 地方や海外在住の方でも利用できる

カウンセリングの直前にメールなどでリマインドの連絡がくるため、時間通りにカウンセリングが受けられます。都合が悪くなった場合でも、比較的柔軟に日付変更ができるのもオンラインカウンセリングの特徴です。

オンラインカウンセリングであれば、画面を通して話せるため、気軽に相談できます。悩みを相談したいと思った方は「こころケア」のご利用を検討してみてください。

まとめ

今回は、ADHDの特徴や症状について詳しく解説しました。ADHDは、子どもだけではなく大人になってから気づくケースも増えています。症状が当てはまる場合は、専門外来の医師の診察を受けましょう。

また、ADHDの症状を改善するためには、生活習慣を改善したり、カウンセリングを定期的に受けたりすることが重要です。一人で悩みを抱えずに、専門家が在籍しているオンラインカウンセリングの利用を検討してみてください。

 

記事監修

公認心理師 櫻井 良平

監修者写真兼カウンセラー写真

国家資格
  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • キャリアコンサルタント
  • 社会福祉士
  • 保育士
所属学会等
  • 日本認知療法・認知行動療法学会
  • 日本発達障害支援システム学会
    (第17回研究セミナー・研究大会において学会賞受賞)
略 歴
  • 医療機関や民間のセンター等での対面・電話・オンラインカウンセリング経験が豊富
  • 認知行動療法にかかる厚生労働省・国立研究機関主催研修を修了
  • 第一線の専門家に師事し、精神分析療法、解決志向短期療法、愛着理論、応用行動分析学等を研究
  • 教育・心理・社会保障・保健医療分野における国内外の国際協力プロジェクトへの従事経験を持つ
    (開発途上国における「育児・子育て手法」「発達アセスメント・支援ツール」「知能検査」の開発・普及プロジェクト等)